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28 直接的な刺激がなくても
「ひ…っ!離せ、ばかっ、離せ、やめっ……」
「逃げれるもんなら逃げてみなよ。暴れても無駄だから」
ガチャガチャと縛られた手をバタつかせると、思い出したかの様に腋の下から胸の横辺りを擽られた。
「~~…っ、指…離せ!っんはぁ、あっ、」
「優しく触ると気持ち良さそうだね」
完全に快感しか生み出さない動きに焦りを覚えながら暴れると、響くんの顔はまた俺の耳へ戻ってきてしまった。
このまま変な事囁かれたらやばい。
「も…!ショーの練習、しよう、よっ、ばか、ねぇ、もうそれやだぁ……」
サワサワと肌を擽りながら耳へ舌を入れてくる。先程感じた絶頂寸前に近い快感が戻ってきてしまい、必死に体をバタつかせた。
直接的な刺激がないままイクとかあり得ない。しかも決定的なものが"声"になるなんて尚更。
「動くな」
「!!…ッ、ひぁ……」
「これは5分我慢出来ずにイッたお仕置きだから大人しくしなよ」
「やめ……っ、ふぁ、…ぁぅ……んん…」
「可愛い。……強い言葉で言われるといい子になるんだね?」
「るさい…ばか、やめっ…悪趣味…!」
「悪趣味かもね。でも耳でイキそうになる詩が可愛くてさ」
クッ、と舌先が中へ侵入すると、ビクッと激しく体が跳ねた。それに合わせて肌を擽る指も少し激しめに動き出す。
「~~っ、…うぅー……あっ、ぅ」
「好きだよ、朝日」
「!?」
低い声で本名を囁かれた瞬間、一気に絶頂が近付いた。
「やば…っ!待て、まじで待て…っ、やめ、それやめてっ」
「朝日、可愛い。…このままイこっか」
「やぁ…!恥ずかしい……っやめて、」
ビクビクと跳ねながら足首が伸び始めると、自分でも分かる程にイキそうな感覚が襲う。
「…響く、んっ…響くん!!やばい、やばいっ……」
「うん、もうイケそうだね。ここ触ってあげたらイキやすいかな?」
ずっと胸の横辺りにいた指がぷくりと主張した乳首へ伸びるとカリカリと優しく引っ掻いた。
(あ、やばい)
そう思った時、響くんがトドメに俺の名前を呼んだ後、愛の言葉を囁いた。
「あ…っ、~~~---っっ、」
ぎゅうううっと拳を握り締め、静かに絶頂を迎えると、体が落ち着くまでは刺激を止めてくれた。
「……ふ、はぁ……ぁ……」
握り締めていた拳から力は抜けて、くたっと脱力すると、可愛い顔で俺を見下ろす響くん。
「…へぇ、下触んなくてもイケるようになったんだ。可愛いね」
「………うん」
初めての絶頂の感覚に素直に頷くと、頬を染めた響くんが勢い良くキスをしてくれた。
「…可愛い、急に素直にならないでよ。顔もトロトロだし」
「…だ、て…こんなの…初めて、だったから……俺、本気で響くんの事好きなんだなって、思って……」
「俺も凄く好きだよ。…あーー…だめ、やっぱり恋人になって長いから詩が他の人に攻められてるの見るの耐えれるかなぁ」
ドサッと俺の上に倒れ込んだ体を受け入れて、クスッと微笑んだ。
さっきまで散々ドSっぽかったくせに、突然拗ねた子供の様に可愛くなる響くんが愛しくて。
「…そんなに嫌ならやめるよ?」
「んー、出るよ。詩、みんなに見られながら意地悪されるの興奮するでしょ?」
「ん、響くんが隣に居たら興奮する。絶対今までみたいに近くに居てね」
「それはもちろん。けどゲームに負けたら5分は頑張りなよ?」
「響くん以外に攻められてイク自分、想像出来ない」
「よく言うよ。すぐイクくせに」
「イカない!あんただからイッてんのー!」
外してもらって解放された腕を響くんの背中へ回して軽い口喧嘩を繰り広げた。
◇ ◆
その後、ホテルで効果があるのかないのか分からない玩具と我慢する練習をしてからショーに出場するまではあっという間で。
久しぶりに会場を二人で訪れた。会場を見るなり、今までの記憶が蘇り、ドキドキと心臓が音を立てた。
「何か久しぶりだね」
「そうだね。体調はどう?」
「バッチリだよ」
「じゃあ行こうか」
「うん」
響くんと並んで歩きながら会場へ入り、スタッフさんから案内されたのは今までと同じステージ。
相変わらずのSMチェアが並ぶステージには、既に何人かのペアが拘束されており、いじめられている人達も見てとれた。
「では詩さん、洋服を脱いでこちらへどうぞ」
スタッフさんに声をかけられ、服を全て脱いで響くんへ渡すと、久しぶりに響くん以外に晒す裸体。
最初から何故かM字開脚状態なのはかなり恥ずかしいが、スタッフさんも響くんも淡々としており、それが余計恥ずかしさを加速した。
「では、時間まで暫くお待ち下さいね」
拘束具を確認したスタッフさんは、別の人の所へ行き、響くんと二人の瞬間。
「…っ」
じっと俺の裸体を見てニヤニヤ笑う響くんに羞恥を感じて顔を背けると、クイッと顎を持ち上げられた。
「恥ずかしいねぇ、みんなの前でこんな格好晒すなんて。…頑張ってね?」
「何だよその言い方…!か、…かれ、し…のくせにっ」
「あ、そうだ。今日もし今まで参加してくれてた人が居たら付き合った事報告していい?」
「え?…いいけど、マイナスにならない…?」
「恋人同士でペアも多いらしいよ。だからならないらしいけど、嫌ならやめとく」
「…ん、マイナスにならないなら言ってほしい……」
たまに響くんにも向けられる眼差しに不安になっていたので、この人は自分のものだと伝えておきたい。
じっと見つめると、うん、と優しく言いながら頭を撫でてくれた。
「まぁ今回ものんびりいこう。キスはNGにさせてね。詩が他の人としてるの絶対にやだから」
「うん。響くんもすんなよ」
「何で俺がするんだよ」
そう言い合っていると、久しぶりに聞く司会者の開始を知らせる声と共に、お客さんが入場してくる音が聞こえてきた。
「…響くん」
嫌だと言われたが、ダメ元で名前だけ呼んで唇を尖らせると、周りを見渡しながらリップキスをくれた。
「…これすると、何か何でも上手く行く気がするんだ。ありがと」
「…ん、恥ずかしいからしないって言ったのにまた強請ってくるとは思わなかったよ」
「響くんが恥ずかしがってる所も好きだよ」
「俺も好きだよ。だから…たっぷり見せてね?」
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