13 / 70

Rendezvous01 ぽんこつナイト12  同衾パート2

 ミチルははたと我に返った。  もう外が薄暗かった。 「ジェ、ジェイ?もしかして今日ずっとオレについててくれたの?」 「そうだが」 「仕事は!?」 「休みをとった」  何てこった!ミチルは一気に自己嫌悪に襲われた。 「ごご、ごめええん!」  一宿一飯の恩義があるのに、仕事までふいにさせてしまうなんて、オレってチョー迷惑なヤツじゃない!?  ミチルが青ざめていると、ジェイは優しく笑った。 「気にしなくていい。休暇などいつでもとれる。ミチルを一人に出来るわけがない」  ……ぽ。  なんか、なんか、どうしよう。すごく大事にされた感!  やだあ、なんか嬉しい!  ミチルは自分が倒れたのはそもそもジェイが原因だったことはすっかり忘れていた。  そうしてお気楽にうふうふしていると、ジェイが顔を近づけてミチルに聞いた。 「夕食は食べられそうか?何か消化にいいものにするか?」  ぎゃーん!イケメンが近いぃ!  急にやって来ないで!心臓が砕けるから! 「だ、大丈夫!普通に食べれる!何でも食べる!」 「そうか。では少し待っていてくれ。何か買って来よう」 「え?」  貧乏だと言っていたのに、そのジェイの答えがミチルは意外だった。確かにこのオンボロアパートにたいしたキッチンはないけれども。 「恥ずかしい話だが、私は炊事が出来なくてな。一人だと外食の方が手間がなくていいんだ」 「なるほど……」  確かにこの部屋はあまり生活感がない。食べ物がほとんど置いてないからだろうと気づく。  ミチルだって炊事などしたことがない。ご飯は黙っていても出てくるものだった。  しかもここは異世界。とりわけファンタジー世界での炊事なんてゼロどころかマイナスからの発進だ。 「すぐ戻る」  そう言い残してジェイは部屋を出て行った。  ジェイが買ってきた物は、コッペパンに野菜とソーセージが挟まっているようなものだった。  それを二つ。以上である。  お金がないのは本当なんだな、とミチルはその食卓を見て実感した。  ジェイは申し訳なさそうにしていたが、ミチルは有り難くそれを頂戴した。  文句などあるはずがない。ジェイに会えなかったら今のミチルはないのだから。  本当に、ジェイに会えてラッキーだった。  ジェイとミチルは食後少しおしゃべりをした後、シャワーを順番に使った。  ただの水浴びに近かったけれど、久しぶりの風呂に入れてミチルはスッキリしていた。  パーカーは汚れてしまったのでシャワーのついでに洗った。それでミチルはジェイのワイシャツを借りた。  そして、後はもう寝るだけである。 「……」 「どうした、ミチル」  ジェイはベッドの半分を開けてミチルが来るのを待っている。 「今夜はベッドで寝る……の?」 「私は床でもいいが、それだとまたミチルが気を遣うだろう。狭いが勘弁してくれ」  ジェイの理屈はとても正しい。家主のジェイに床で寝ろなんて口が裂けても言えない。  だけど、これってお膳立てっぽくない? 「さあ、おいで」  やだあ!そんな新婚初夜みたいなこと言わないで!  ミチルはドキドキドーキドキでおずおずとジェイの隣に入った。 「もっと寄ったらどうだ?」 「だだ、大丈夫です!ボクはホントに大丈夫です!」  ミチルはジェイに背を向けてできるだけ端っこに寝た。ベッドから手とか落ちてるけど、もうこれでいい。 「……おやすみ」  ジェイはそれ以上は何も言わずに窓のカーテンを閉めた。月明かりも途絶えて、部屋は真っ暗になった。 「おやすみなさい!」  ミチルはそう言って目をぎゅっと瞑る。早く寝ちゃおう!そしたらすぐ朝が来るよね!  しかしミチルは昼中ずっと寝ていたことを思い出した。  ぜ、全然眠くないんだけど!?  ミチルがばっちり目を開けて体を硬直させていると、ジェイの手がミチルの肩に伸びてきた。 「ミチル……」 「ふぇ!な、何?」 「ミチルから良い香りがする……」 「え──」  ミチルが反応に戸惑った隙に、ジェイはミチルを側に引き寄せた。  ちょ、ちょちょちょお!  焦ったところでもう遅かった。ミチルは後ろからジェイにしっかりと抱きしめられた。 「ジェ、ジェイ!?」 「とても落ち着く……いい香りだ」  ジェイはミチルの肩甲骨のあたりに顔を埋める。  生温かい吐息が背中を駆け巡った。 「ああっ!」  また高い声が出てしまった。  なんで?ジェイは起きてるよね?喋ってるもんね? 「ミチル……もっと……」  ジェイはミチルの腹部、ヘソのあたりに手を這わせてシャツのボタンをひとつ、外した。

ともだちにシェアしよう!