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Rendezvous01 ぽんこつナイト13  狂わせる香り  ※

「ミチル……もっと、欲しい……」  そう囁きながら、ジェイは後ろから手を回してミチルのシャツのボタンをひとつ、またひとつと外した。 「ジェイ!ちょっと、ジェイ!寝てんの!?」  ミチルはあり得ない出来事に面食らっていた。 「ミチル、いい香りだ……」  ジェイはそんなことを呟きながら露わになっていくミチルの肌に手を這わせた。温かい熱が移っていく。 「あ……っ!」  待って、昨日と手つきが全然違う!  寝ぼけたジェイの手はわりとガサツだったが、今のジェイの手はなんというか……すごくそれっぽい。 「ジェ、ジェイ……待って、やばい……」  心臓がドクドクと跳ね上がる。  どうしよう、どうしよう。ジェイはどうしちゃったの? 「ミチル……ミチルの香りでおかしくなりそうだ……」  ねえ、さっきから何言ってんの!?  オレにそんな匂いあるわけないだろ!童貞だぞ!!  ミチルはそう叫びたかったが、ジェイの手が次々とボタンを外す。あっという間に開襟された胸にジェイの手がするりと伸びた。 「……!やぁっ……!」  緩んだシャツは、徐々にずらされていく。肩が露わになり、それとともに晒された背筋にジェイは唇をたてて吸いついた。 「あぁ……っ!」 「ミチル……いい香りだ……」 「や、やだ……ジェイ、ダメだよ。こんなの……やばいよ」  感じているのを懸命に隠してミチルは訴えた。だがジェイは更に舌を這わせる。 「ふぁ……っ!」 「ミチル……ああ、ミチル……」  しっとりと、それからねっとりとした感触がミチルの背筋を襲う。思わずミチルはのけ反った。 「ああっ!あん、や……やぁ……」 「もっと……もっとだ、ミチル……」 「ジェイ……も、やだぁ……」  ジェイの心が見えない。  激しく求めてくるのにジェイを感じない。  ジェイはどうしちゃったの?  起きてるんでしょ?なんで答えてくれないの?  ミチルがなんとか快感に抗っていると、ジェイはますます吐息を荒くしてミチルの下腹部を(まさぐ)った。 「やぁ……!ダ、ダメェ!」 「もっと、香りを……出してくれ」  ジェイはミチルの背中に顔を埋めながら、手を前に進める。ミチルの熱くなっていく箇所を撫でた。 「はぁ……!あっ、ああっ!」  与えられた刺激が、布の上からなのに激しくミチルを揺さぶった。そこが急にせりあがっていくのがわかった。  ジェイはそれを優しく撫でながら、うっとりした声で囁く。 「ミチル……いい香りだ、なんて……いい香り……」 「はっ、はぁっ……!あ、はっ!」  もうダメ。  もうヤバい。  ミチルの全身を熱い血流が駆け巡っている。 「ミチル……ミチル……」  ジェイの手はミチルのそれを撫でるのをやめなかった。時になだらかに、時に握り込むような緩急でミチルを追い込んでいく。 「あん……ジェイ、ジェイッ!」 「ミチル……」 「あ──」  ミチルはジェイの手で解放され、そこで意識を手放した。  視界が、白くなった。 「ん……」  ミチルがゆっくりと目を覚ます。ジェイの腕が、ミチルを絡めとるように体の上に置かれていた。  下半身が怠い。というか体中が怠かった。  ジェイの寝息が後ろで聞こえている。絡む腕からは力を感じなかった。  ミチルはその腕をそっと外して上体を起こす。それから振り返ってジェイの寝顔を見た。  赤ん坊のような、安らかな顔をしていた。  長い睫毛が朝露で濡れたように光っている。  イケメンの寝顔は、美しい。  こんな美しい人に、自分は昨夜またも翻弄された。  その綺麗な寝顔を見ていると……  見ていると。  めっちゃムカつく!! 「うらあ!起きろぉ、このぽんこつ野郎!」  ミチルは怒りのままにジェイの脇腹を蹴り上げた。 「む……う」  だがジェイは少し顔をしかめただけで、ゆっくりと目を開けた。  おのれ、鋼鉄の腹筋めえ!ミチルはますます腹が立った。 「あ、ああ……ミチル」  おーおー、昨夜は随分と楽しんでくれたなあ。  開口一番に何を言うつもりだ?  ミチルは怒っていたけれど、昨夜の所業の真意が聞けると思っていた。  それ次第では、その……ええと、嫁に入ってもいいかなって。キャッ!  だが、ぽんこつの発する言葉は。 「どうした、ミチル。暑かったのか?」  シャツがはだけまくったミチルのあられもない姿を見て、ジェイはきょとんと首を傾げていた。 「え……?」  ちょっと待って。  ほんと待って。  ねえ、最悪のシナリオなんだけど。 「ミチル、私のイビキはうるさくなかったか?」 「ジェイ、まさか……覚えてない、の?」 「私は、まだ何かしたのか!?」  ──キャアアアアアア!  ミチルは奈落の底に落ちていく気分だった。 「ミチル?」 「お、おおお、おおおお……」  ミチルはがっくりと力が抜けた。  寝てた。寝てたんだ。やっぱり寝ぼけてたんだ!  寝言をベラベラ言いながら寝るタイプのヤツだったんだ! 「クソがああっ!」  ミチルは叫びながら立ち上がってベッドから降りた。 「ミチル?どこに行くんだ?」 「シャワーじゃあ!わしゃ、朝風呂に入るんじゃあ!」  ミチルは浴室に怒りながら逃げこんだ。    ああの、ぽんこつ野郎がああ!  全部洗い流してやらあああ!  ミチルは芽生え始めそうだった気持ちを、怒りで摘み取った。

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