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Rendezvous02 ホスト系アサシン07 早朝の確認
「……チル」
誰?
「……チル」
オレを呼んでるの?それとも……
「ミチル……」
「う……」
ミチルはゆっくり目を開けた。目の前にはアニーの綺麗な顔があった。
「アニー……?」
部屋は薄明るくなっていた。少し寒い。もうすぐ陽が昇ろうとしていた。
「ミチル、大丈夫……?」
アニーは不安そうな顔で尋ねる。昨日の彼とは思えないほどに声がか細かった。
「んー?」
ミチルは定まらない意識のままアニーをぼうっと眺めていた。アニーは更に表情を曇らせてミチルの頬に手を伸ばす。
「ミチル……」
「あああっ!!」
その手つきに、やっと昨夜のことがフラッシュバックしてミチルは飛び起きた。アニーは伸ばした手を引っ込める。
「ア、アニー、起きたの?」
「うん、今……ええと、その……」
アニーの視線は申し訳なさそうにミチルの体に注がれている。ミチルは視線を下に移して仰天した。
「ぎゃおおおお!」
腹も胸も、ついでに腰半分が丸出し状態。完全に痴情の後。きわめつけはミチルの胸元。
「こ、こ、これは……」
胸に点々と刻まれた赤い鬱血。痒くないので虫刺されではない。そう、これが、噂に聞く……
「キ、キ、ス……マー……あああああっ!」
ミチルは即座に捲れ上がっていたパーカーを下ろして、ズボンもずり上げた。
「申し訳ないっ!」
アニーはその場で土下座した。ミチルはそれで淡い期待を抱く。
「ア、アニー?もしかして、覚えて……?」
「覚えて……」
ゴクリ
「……ないから、更に申し訳ないッ!!」
「クソがあああっ!」
何なの、何なのこのパターン!!オレって呪われてんの!?
「あの、ミチルさん……確認なんですが」
アニーは土下座していた顔をおずおずと上げながらもの凄いことを尋ねた。
「おしりは、痛いですか……?」
ボッカーン!!
今のはミチルの脳みそが噴火して砕け散った音である。
「痛くねえわ!見くびるなよ!オレがそこまで許すと思うか!!」
半狂乱で叫ぶミチルを見て、アニーは安堵の溜息を漏らし少し笑顔を取り戻した。
「あ、ああ……そう!最後までは……そう!よ、良かったあ」
どこに安心してんの!?充分大事件だったんだけど!!
「もし、そんなすんばらしい体験をまるで覚えていなかったら、俺は自己嫌悪で死んでしまうところだった!」
「殴るぞぉ!顔じゃなくて腹をな!」
「ああっ!でもミチルの若く青い果実を貪った記憶がないなんて!何故!?」
「蹴るぞぉ!顔じゃなくて背中をぉ!」
頭を抱えて悔しがるアニーに、ミチルは怒りを爆発させたものの。
「覚えてないよお、悲しいよお、残念だよお……」
シクシク泣くアニーの姿に、ミチルはなんだか毒気を抜かれてしまった。
「まったく、わざとだったらアニーは目覚めてないからね!?言っとくけど!」
「……という事は、信じてくれるの?」
「うん……アニーが正気じゃないのは、なんとなくわかったから」
「ミチルぅ……」
泣きながら笑うアニーの顔は情けなくもあったけれど愛嬌があって、イケメンだからかなり可愛くてミチルの怒りは完全に消えてしまった。
「次はないからね。合意なしにしないとか言っときながら、あんなことしたんだから」
「もちろん!次はちゃんと合意を取るから」
「論点が違う!」
ああ、なんか力が抜ける。
とりあえず、昨夜の変なアニーはいなくなった。
ここにいるのは、調子のいい、快活で優しい、元の印象のアニーだ。
安心したミチルは急に眠気を感じた。
「なんか……まだ眠い……」
するとアニーはベッドから降りて、ミチルを優しく寝かせる。
「まだ朝も早いからもう一眠りするといいよ。ゆっくりお休み」
毛布をかけてそう言うアニーの声はとても優しくてあったかくて、更にミチルを眠りに誘 った。
「うみゅ……」
ミチルはもう一度目を閉じる。
柔らかくてまだ弱い朝の光に、とても安心した。
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