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Rendezvous02 ホスト系アサシン18  本気だから後悔する

「はあ……」  大袈裟に溜息を吐くアニーを見て、今回のチームリーダーであるマリーゴールドは怪訝な顔で声をかけた。 「おう、どうした。アーちゃんよ、今日はずっとそんな顔してるじゃねえか」 「アニキ、もうアーちゃんなんて呼ばないでくださいよ。俺、26ッスよ」 「ははっ、俺にとっちゃあお前なんざまだまだ坊やだな。今日は随分といい血色でやって来たと思ってたのによ」  マリーゴールドは豪快に笑っていた。アニーは自分の顔の肌触りを気にしながら聞く。 「マジっすか」 「少なくとも、お前が目の下にクマを作っていないのは初めて見たな」 「マジか……それは相当だな……」  アニーはそのまま頬杖をついて自分の変化に驚いていた。 「ははあん、おめえ、とうとうイイ抱き枕見つけたんだな?やるねえ、小僧っこが」  マリーゴールドが少し下世話な笑みを浮かべたが、アニーはそれをスルーして力無く呟いた。 「抱き枕、ねえ。確かにあれは極上ですよ……」 「ほっほほお、お前からそんな色惚けが聞けるなんざ、長生きするもんだ。安心したぜ」 「明日の朝には手放しますけどね……」 「なんで?」  キョトンと首を傾げても全然可愛くないマリーゴールドを横目で見ながら、アニーは更に溜息を吐いた。 「俺だってツラいんですよ……本気になる前に別れちまった方がいい時もあるでしょ?」 「バカ、おめえ。そんな時はねえよ」  マリーゴールドは目を丸くして真面目な顔で答えた。 「その様子じゃあ、どうせ後悔するんだろうよ。だったら手元に置いて一緒に後悔すりゃあいい」 「簡単に言わないでくださいよ……俺だって散々悩んだんだから」 「どうも要領を得ねえな」 「あの子はね、アニキの想像も及ばない場所にいる子なんですよ」 「そんなんで今夜の任務やれるのか?」 「大丈夫、日が落ちたらちゃんとします」  煩そうに顔を顰めて肩を落とすアニーの様子に、マリーゴールドは肩を竦めるしかなかった。 「随分と厄介な相手に惚れたもんだな。まあ、そこまで思える相手なんざこの先に二人といねえだろ。腹ァ決めるんだな」 「……」  アニーがもう返事もしなくなったのを見届けてから、マリーゴールドは部屋から出ていった。ガハハと愉快そうに笑いながら。 「他人事だと思って……」  アニーの呟きは、窓の外を流れる川に落ちた。  一方、ミチルの方は。 「川はあったけど、家がないな……」  薄暗い森の中を散策していた。森の外に道路があったはずなのに、「川」という単語のせいでミチルは大きく人里を外れてしまっている。  前も森の中で相当な目にあったのに、ミチルはもう忘れていた。なんならここが鬱蒼とした森だという事もまだわかっていない。 「ほんとにこんな所に屋敷があるのかな?」  ミチルは草をかきわけて森を進んでいく。もうすぐ日が暮れてしまうのも忘れて、ただ川に沿って歩いていた。  行けども行けども森はミチルになんの兆しも見せてくれなかった。そうしているうちにとうとう日が暮れてしまい、気がつくとミチルは暗闇の中で立ち往生していた。 「やべ……もう全然見えない」  灯りすらも感じられないと言うことは、近くに屋敷もないと言うことだ。  ミチルは一気に不安になって泣き叫んだ。 「ああーん!おじさんのウソつきィ!何が赤いサルビアの人だよぉ!黒い木ばっかりだよぉ!」  すると、不意にガサガサと音がした。 「今、ボスを呼んだのは誰だ?」 「ヒィ!!」  低い男性の声がした。その気配はすでに数歩先まで迫っている。 「テンの使者か?」  ミチルには何のことかわからなかったので、一か八か答えてみた。 「アニー、アニーはいますか?」 「アニーだって?……ちょっと待ってろ、今火をつける」  声の主はそう言うとマッチを擦って、手持ちのランプに火を灯した。  そうしてようやく人影の全貌が見える。 「ぎゃあああ!ヒグマぁ!」  毛むくじゃらで、黒く大きなその姿にミチルは思わず悲鳴を上げた。 「騒ぐな!……ん?」 「あうあう……」 「なんだお前?……子どもか?」  ヒグマのようなおじさんはマリーゴールドだった。

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