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第10話

 あれから月日が経ち七月へ突入していた。晴明に抱いた恋心を打ち明けられず、部屋も決まらず、ずるずると関係は続き、シェアハウスに近い感じになっている。  お金は払っているが、いつ想いがバレるかと思うと怖くて仕方がない。でも、一緒に居たいという気持ちもあり、この状況に甘んじている自分に嫌気をさす雨霧がいた。 「今日は一緒にお出かけしませんか?」 「ちょうど暇だしいいよ」  朝のパンにも慣れてきた朝食の時にお出かけに誘われ、嬉しくなっている自分は随分と現金だなと心の中で雨霧は苦笑いをした。晴明の一言、一動作に一喜一憂する。  こんなこと出雲ではなったことはない。もしかしたら自分は出雲に恋をしていなかったのかもしれない。ラインで別れ話をした際もあっさりと別れられた。きっと出雲にとって自分はただの飾りにすぎなかったのかもしれない。  いないとき荷物を取りに行ったが、変わらない部屋にあのトラウマが蘇り、さっさと帰った記憶がある。  今でも革靴の男と愛を囁き合っているのだろうか。今は知る術はないけど、元恋人としては幸せにはなってほしいと思ってはいる。バターをたっぷり塗った食パンをかじり、今日の予定を組み立てていった。  肌を突き刺しそうな日差しと暑さにインドアな雨霧は確実に体力を奪われていた。隣にいる晴明を見ると涼しげな顔をして歩いている。もう少し体力をつけないとなと自分に言い聞かせた。 「あー! 翔平くんじゃん!」  聞き覚えのある声が後ろからして、雨霧の心臓が跳ねあがる。暑さからきた幻聴だと信じたかった。だが、クリーム色のくせっ毛にまん丸の水色の瞳は見間違うはずもない。元恋人である出雲が雨霧の方に駆け寄ってくる。  顔色を変えた雨霧に晴明は心配そうに見ているが、元凶である出雲は気づくことはなく無邪気な笑顔を見せていた。 「翔平くんが外出てるなんて珍しいじゃん。隣の人はお友達?」 「まぁ、うん」 「そうなんだ! 本当に珍しいね! 初めまして僕出雲 馨というの。よろしくね。君の名前を聞いてもいいかな?」 「初めまして出雲さん。私は晴明 拓哉と申します。雨霧さんとは仲良くさせていただいてますよ」 「そっか! それはよかった。せっかくだから三人でお茶しない? 僕いいところ知っているんだー」 「どうします?雨霧さん」 「えっ、いいんじゃないかな」 「やったー! じゃあ、決まりだね」  本当は今すぐにでも帰りたい。だが、断るのは申し訳ない。晴明は出雲を友達だと思っているはずだ。自分が我慢すればいい。そう雨霧は言い聞かせた。

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