11 / 20
第11話
都内の小さなライブハウスを貸し切り、試験的なミニライブが行われる。自分以外の誰かが551のセンターに立つことが受け入れられず自室に籠城した。
けれど新の反抗など見越してか、ナオトは構わず部屋に入ってくる。
「ほら、早く行くぞ」
「やだ」
布団を頭から被り、すべてのものを遮断した。
歌も、光も、ナオトも。ここにいればこれ以上傷つかない安全な場所のように思える。
「何をそんなに怖がってるんだ」
「だって……ボーカル」
「俺の言葉が信じられないか?」
驚くほどやさしい声音は新の鼓膜を震わせる。
「なら何度でも言ってやる。551のボーカルは新だよ。新以外、考えられない」
「うるさい」
「新の歌がいい」
「うるさい」
「新の声がいい」
「うるさい!」
睦言のような響きに耐えきれず布団から顔を出す。顔が熱い。
当の本人は新が顔を出すと目尻を下げた。
「きっと他のメンバーも待ってるよ。俺も一緒に行くから」
「……わかったよ」
渋々といった体で着替え始める。新の様子をみてナオトは嬉しそうに口元を綻ばせた。
「といってものんびりしてる時間はない。今は何時だ?」
「十五時二十一分五十二秒だ」
新が平然と応えるとナオトは目を丸くした。
「秒数まで言う奴は初めてだ」
ともだちにシェアしよう!