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第11話

 都内の小さなライブハウスを貸し切り、試験的なミニライブが行われる。自分以外の誰かが551のセンターに立つことが受け入れられず自室に籠城した。  けれど新の反抗など見越してか、ナオトは構わず部屋に入ってくる。  「ほら、早く行くぞ」  「やだ」  布団を頭から被り、すべてのものを遮断した。  歌も、光も、ナオトも。ここにいればこれ以上傷つかない安全な場所のように思える。  「何をそんなに怖がってるんだ」  「だって……ボーカル」  「俺の言葉が信じられないか?」  驚くほどやさしい声音は新の鼓膜を震わせる。  「なら何度でも言ってやる。551のボーカルは新だよ。新以外、考えられない」  「うるさい」  「新の歌がいい」  「うるさい」  「新の声がいい」  「うるさい!」  睦言のような響きに耐えきれず布団から顔を出す。顔が熱い。  当の本人は新が顔を出すと目尻を下げた。  「きっと他のメンバーも待ってるよ。俺も一緒に行くから」  「……わかったよ」  渋々といった体で着替え始める。新の様子をみてナオトは嬉しそうに口元を綻ばせた。  「といってものんびりしてる時間はない。今は何時だ?」  「十五時二十一分五十二秒だ」  新が平然と応えるとナオトは目を丸くした。  「秒数まで言う奴は初めてだ」

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