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第18話
「おまえの中の俺はきれいなままで残したかったんだ」
「そんなの許さない! 俺は、だって、直澄のこと」
唇に直澄の指が触れる。それ以上言葉を紡げなくて、代わりに涙が落ちた。
「でも新の顔をみたらダメだな。あんなに決意したのに簡単に壊れる。俺の身勝手だけど、ずっと一緒にいてくれるか?」
「いるに決まってるだろ、莫迦!」
「そういう気が強いところも好きだよ」
直澄の唇が新のそれと重なった。重なると、もうダメだった。腕を引っ張られ直澄の上に跨がる。
舌は執拗に新の咥内を犯して境界線を曖昧にする。人も、ロボットも。
「んあ……んんっ」
「新の口の中、熱いな。ちゃんと唾液もでてる」
「そっ、な……いちいち実況するな」
「感じてくれてるのが嬉しくて」
キスを繰り返しながら、直澄の手は新のシャツを捲った。臍からゆっくりと上に上がってくる。いやらしく指先が蠢く。
胸の突起に触れられる。指の腹が何度も往復しただけなのに、ビクリと大袈裟に身体が跳ねた。
「なっ、なに?」
「もしかして感じた? アイロイドでも感じるんだ」
「感じて、ない」
「嘘。だってこんなに固い」
直澄はぐりぐりと押しつけるように突起を弄んだ。感じてない、と言った手前、新は唇を噛んで耐えた。
こんなところ感じるなんて女みたいだ。やだ。恥ずかしい。
「ほら、赤くなってきた。見てみろよ」
シャツをたくしあげられて突起が露わになり、新の顎を掴んで下に向けさせる。
「ここ舐めたらどうなるかな」
「やっ……んんっ」
ねっとりとした舌が見せつけるように突起を含んだ。わざと水音も出して、耳からも羞恥心を煽る。それなのに目が離せない。
自分の胸に貪っている直澄をみたかった。
直澄の頭を抱え込み、ちくちくとした髪が肌に刺さっても感じた。
直澄の体温に感じた。
リミッターが外れたみたいに直澄の存在を感じると、どうしようもなく気持ちいい。
膝に力が入らなくなりその場に座り込んだ。
臀部に固いものが当たり、それが何なのかわからないわけじゃない。
ただ信じられなくて、まじまじと直澄を見返した。
「新の可愛い姿みてたら滾っちゃったよ」
「莫迦」
「ここにさ、」
直澄の指が身体の奥をさする。
「俺の挿れたいんだけど、いい?」
律動のように指を前後させて、ズボンの上からその場所を刺激する。わかってるくせに。ヒューマロイドは主人に言われたら反抗できない。
いや、直澄だから直澄の望むようにしてあげたい。
「好きにしろよ」
「じゃあ遠慮なく」
ぐるりと視界が変わり、後ろに押し倒された。覆い被さった直澄は病衣を脱いで下着だけになった。
新の衣服もはぎ取られる。まじまじと新の素肌をみて、直澄は感嘆を漏らした。
「きれいだな」
「作り物ですけど」
「それに勃ってる」
「う、うるさっ……あっ」
直澄の大きな手のひらが新自身を包む。すでに固く天を仰いでいたそれは、直澄の手淫に歓喜する。
先端から蜜が溢れてきて、鼻に抜ける声が甘く響いた。
「ちゃんと出るんだな」
「槇が人間に近づけたい、って……ん」
肩口を噛まれて息が詰まる。
「こういうときに他の男の名前出すなよ」
直澄の長い前髪から鋭い視線を向けられる。ぞくぞくと背筋が駆け上った。
「あ、おっきくなった。もしかしてマゾ?」
「うるさい!」
「その調子。指、挿れるぞ」
新の蜜で濡れた指が会陰をなぞり、ゆっくりと入ってくる。息が詰まった。痛いとか苦しいとかはない。ただ違和感がつきまとう。
短い呼吸を繰り返していると、直澄は気遣わしげに表情を曇らせた。
「痛いか?」
「変な感じ」
「そうか。ここもちゃんと作られてる。温かい」
「いちいち言うな!」
「指突っ込まれてるのに元気だな」
余裕だと思われたのか直澄の指が増えてくる。二本目も奥へ飲み込むと直澄から表情は消えた。
荒い呼吸を繰り返している。
「挿れたい」
切実な訴えに新は首を振った。直澄は二、三度欲望を扱いてから秘部にあてがった。
ぐっと腰が進み身体が開いていく。直澄だけの道が作られていく。
萎えていた新の欲望を扱きながら、直澄は腰を進める。
「気持ちいい。やばい」
譫言のように繰り返しながら直澄は中を犯していく。異物感が増して少し辛いが、直澄の気持ちよさそうな表情をみていると嬉しい。
涙が零れた。
「直澄、好きだ」
「愛してる」
律動が始まり、出たり入ったりを繰り返しているとある一点を掠めた。すると身体は今までにないくらい熱くなる。
奥から甘い感覚が溢れてきた。
「あぁ、あっ、んっ」
「ここ?気持ちいい?」
「わかんない」
わからない。身体が熱い。
萎えていた欲望はしっかりと頭をもたげていた。新の言葉よりも雄弁に快楽を訴えている中を穿たれるたびに全身が震えた。
「新の中、ねっとりと絡みついてくる」
「言うな」
「中がきゅうきゅうして離してくんねぇの」
「やだっ」
直澄は耳元で新の中がどうなっているのかを語り出す。甘く囁く声は腰に響く。
時折、耳殻を舐められるとぐじゅぐじゅとした音がダイレクトに届いた。
「新が可愛すぎて限界」
「んっ、俺も」
律動が速くなると手管も荒くなってきた。自分の腰も勝手に揺れ出し、最奥へと誘う。
「あっ、あっ、んん」
中に熱いものが注がれると、追いかけるように新も放出した。
すべてを出し切り疲れたのか直澄は新に覆い被さった。しっとりと汗ばんだ肌が心地よい隆起する肩胛骨をなぞり、新は首筋にキスを落とした。
また身体がざわつく。
熱を出したばかりなのに身体の芯は再び火照りだしていた。中に入ったままの直澄自身も強度を増した。
「このまま第二ラウンドいかかですか」
「莫迦」好きにしろよ、と続けると律動が再開された。
太陽が昇り始めるまで、二人はお互いを求め続けた。
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