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第11話

 那央は押入れから布団を出して敷いた。 「ごめんね、布団一組しかなくて…」 「いいよ。俺が急に言い出したことだし、俺は添い寝役だから、那央がゆっくりと寝られればいいんだよ」 「あっ、じゃあこうしよう」  と言って那央は布団の長い方に自分の枕と雅也用にクッションを置いた。 「なるほど、別に足元は布団はなくてもいいよな」  雅也は那央にどういう向きで横になって、どっちの手を繋ぐのがいいのか聞いた。那央は笑いながら、ああでもないこうでもないと横になっている雅也の腕を伸ばしたり曲げたり、左右の手を掴んだりとベストポジション探しを楽しんでいるようだった。  ようやく決まった安眠への体勢は、雅也の左腕を枕にするようにして、お互い向き合うように右手同士を繋ぐことだった。 「今、苦しくない?」 「うん。大丈夫。いつも寝る前は早く朝になってほしいって思っていたけど、今日は…ふふ」 「もし、夜中に苦しくなったらすぐに俺を起こすんだよ」 「うん。ありがとう。雅也さん…おやすみなさい」 「おやすみ。那央」  雅也は常夜灯の薄明かりの中で、那央の寝顔を見た。もう一年近くも一人っきりで辛い夜を過ごしていたんだと思うと胸が痛くなった。リズムよく寝息をたてている那央の額にそっと唇を寄せた。 (朝までゆっくり寝ることができますように…)

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