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第2話

 朝日が昇る前の薄暗い空。小さな頃から染みついた習慣で、ルークは目を覚ました。未だ疲れは取れないが、今から起きないと一日二回の食事が食べれなくなる。  重たい身体を起こしながら、ベットから離れていく。最低限の準備を終わったタイミングで鉄の扉が開かれる音がした。鉄の引きずる音を出しながら食堂へと向かって行った。  相変わらず薄い野菜のスープは、お腹を満たしてくれても、心は満たしてくれない。どこかでこの鳥かごから旅立てる日が来ないだろうかと期待している自分と、そんな希望なんてないと思っている自分にルークは呆れてしまう。食器を片づけたなら、仕事場に向かうために歩き始めた。  白い監獄の仕事場に着くと、いつもの監視役と、見慣れないルークと同じくらいの青年がいた。青年はいつも割っている石と同じ黒く、前髪が厚いマッシュヘアーをしており、冷たそうな目が余計に人形のように淡麗な顔を引き立たせ、氷を連想させる。 「以上が仕事内容だ。お前は優秀だからな。卒業と同時に魔石割りの監視役になるなんて流石オスバルド家だ。何かあったら報告をするように」 「ありがとうございます先輩。期待に答えられるように務めさせていただきます」 「じゃ、またなマテオ」  名も知らない以前の監視役は、マテオと呼ばれた青年の肩を軽く叩き部屋を後にした。ルークにとっては誰が監視でも、この日常が変わるわけではないと思っていたので、魔石を割るためのハンマーを手に取り、割り始めた。  何時間経っただろうか。そんなことを考えることもなく、割り続けていたら、足元に軍帽が落ちてきた。恐らく柵付きの小さな窓から入る強い風が、監視役の軍帽を飛ばしてしまったのだと、ルークは推測をした。  拾わずにいたら、殴られるかもしれないと思い、持っていたハンマーを机に置いて軍帽を拾えば跪いて捧げるポーズを取り、マテオが手に取るのを待った。マテオはルークに近づくと軍帽を手に取る。 「ありがとう六百九」  マテオの言葉にルークは思わず顔を上げて金色の目をまん丸とした。マテオの表情に変化はない。自分がしたことが可笑しなことだと思っていなさそうであった。  少しの間、時が停止をしたがルークが慌てて頭を下げ、仕事をし始めたことで日常が戻った。仕事が終わるまで。沈黙は続いたがルークの心はざわついていた。

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