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こんにちは

「……ふんっ!ふんっ!!」 バサバサと勢いよくベランダで洗いたてのタオルを振る フワフワになるよう心がけて 久々のいい天気。 ミコトは広いべランダで洗濯物を干していた 「今日はたくさん洗濯あるから頑張るぞ」 太陽が好きだ。太陽はとても気持ちよくて明るくて素敵な匂いがする ただミコトがご機嫌なのはそれだけが理由では無い 「今日はカズさんが帰ってくる!!!」 そう。ミコトの番であるカズオミが帰ってくる日だ。 カズオミは出張が多いらしく週に3日程度しか帰ってこない。 それでも帰ってくればカズオミはミコトをすごく甘やかしてくれる 優しいカズオミが大好きだった。 ミコトとカズオミが暮らすのは東京の一等地のマンション ベランダも広く部屋も広い。 ミコトはこの家が大好きだった。 ミコトは仕事はしていない。 カズオミがしなくていいと言ったから ミコトは買い物もしてない カズオミがネットスーパーで頼んでくれているから だからミコトは家の仕事をしている。家事全般だ。 さすがにミコトも申し訳ないと初めは仕事をしようと提案したが 「ミコトの記憶が無くなったのは仕事先でイジメにあって自殺しようと身を投げたからだよ。 もう、僕を1人置いていかないで…」 そう涙を流すカズオミを見ていたらそれ以上のことはいえなかった。 ミコトにはカズオミに会う前の記憶は一切ない。 目が覚めたら今の家のベッドで寝ていた。 目を覚ましたミコトにカズオミは大いに喜んだが 「………あなたは……誰ですか」 そのミコトの言葉にカズオミの絶望した顔は今でも忘れられない カズオミが言うにはミコトは就職先で酷いパワハラやセクハラにあい自殺しようと海に身を投げたとのこと それを見つけてくれたのが番のカズオミだった。 でも、今のミコトは全て忘れてしまっていた。 唯一覚えているのはミコトという名とΩであることだけ 両親のことも今までの友人関係も何もかも思い出せない 『…………カズさん…。僕、記憶戻したい』 そう願った時期もあった。 でもカズオミは首を縦に降らなかった 『……ミコトくん。君の親も友達も君を見捨てたんだ。君が助けを求めても誰も助けてくれなかった。 でも僕は違う!君を見つけた。君の家族は僕だけだ。』 <だから…全て忘れよう> そうカズオミが言った。 ミコトはそれでもいいかなと思った。 ミコトにとっては初めて会うはずなのに何故か惹かれてしまう。“この人がいい”と心が脳が本能が言っている。 『……………うん。分かった。』 運命という確証も何も無いものだけど、ミコトはそれにすがりたかった。 そんなミコトがカズオミに心を開くのにそう時間はかからなかった でもたまに思ってしまうこともある 自分はどんな奴だったのだろう。どんな人生を送っていたのであろうか………と でも、今のミコトにそれを調べることは出来ない。 ミコトとカズオミにはいくつかの約束事がある。 『・主が帰ってくるまでに家事全般終わらすこと ・主の許可無くテレビをつけないこと ・主の許可無く玄関を開けないこと ・主以外の者と話さないこと ・定期連絡を欠かさないこと ・勝手に外には出ないこと ・開かずの間は絶対に開けないこと ・全て主に話すこと ・主の言葉が全てだと感じること ・───には──────こと ・上記を破るとひどい折檻があること』 折檻は怖い。でもそれはミコトがいけないから 親が子を正すのと同じ原理だとカズオミはいった だが、今のところ折檻されたことは無い それほどミコトはカズオミの約束を守るイイコだった

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