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「あ!!やっば。夜ご飯作ってないや」
急いで洗濯物干しを終わらせてキッチンに向かう。
「…………あっ…」
キッチンに向かう途中で見えた扉
『開かずの間』とミコトは呼んでいる扉
カズオミはその扉を絶対に開けてはいけないと言っていた。ご丁寧にその扉は外から南京錠が付けられ鍵がなければ開けられないので結局はミコト1人で開けることは無い
それによく分からない不安感を覚えていた。
この中に入りたくない。と、身を震わせる
ブンブンッと勢いよく頭を振り考えるのをやめる
ミコトは今の生活が気に入っている。
衣食住全て揃っていて大好きな番もいる
この上ない幸せなのだ。
ふと、キッチンにたち自分の左手に目がいった。
そこにはキラキラと奥ゆかしく光るダイヤが埋め込まれた指輪があった
それを見てクスリと笑う
これを見てると安心出来る。
自分が誰かも分からず、どんな人生を歩んできたかも分からず、ある扉に不安感を抱きながらもゆったり過ごせるのは番の…カズオミのおかげなのだと実感する。
ただ、1つ後悔をするのだとすれば
今までのカズオミとの記憶もなくなってしまっている事。
楽しかったこと、嬉しかったこと、寂しかったこと、幸せだったこと……全て
でも、なんの情報もカズオミは教えてくれないから思い出しようもない
ミコトはとりあえず自然と思い出すことを心の奥底で期待しながら日々を過ごしていた。
今日はあっという間に時間が過ぎていく
気がついたらもう19時前
先程キッズケータイにメッセージが届いた
『そろそろ着くよ。待たせてしまってゴメンね』
カズオミからのメッセージにミコトの頬が緩む
ガチャッと玄関のドアが開く音がした
「あ!!カズさん!!おかえりなさい!」
愛しいαを迎えるべく急ぎ足で玄関に向かう
玄関には仕事終わりだと思えぬほど整ったスーツに爽やかな笑顔の美男がいた
「ただいま」
2日ぶりのカズオミの声に無い尾がフリフリと踊る
「おかえりなさい!もうご飯できてるよ。食べよう!!」
「こらこら。帰ったら先ずなんだっけ?」
興奮気味のミコトを宥めるように優しい手が頭を撫でる
カズオミの問いにミコトはパッと頬を赤らめた
「ふふ。ミコトは可愛いね。いつまでも初心で」
「ちょ、バカにしないでよ……」
唇を尖らせる様は流石というのか男であるにも関わらず目の前のαの欲を掻き立てた
「ごめんね。ほら、おいで」
カズオミが手を広げるとミコトはその胸に飛び込む
自然な流れで唇が惹かれあう
「……んッ」
静かな玄関にチュッとリップ音が聞こえる
「……ンッ…か、カズ、さンン……」
カズオミの舌がミコトの口内を犯す
歯列、上顎、歯茎…全て舐め回す舌にミコトは甘い息を吐く
腰と後頭部を腕で抑えられ、少し離れようとしようものならグイッと戻されてしまう
グチュッ、クチュ…と耳の中で恥ずかしい音が響く気がしてならない
激しい舌に思わず口の端から涎が垂れる
「ンッ……プはぁ!…ハァハァ…」
やっと口が離され羞恥に対する心拍数上昇で息が上がる
「可愛いね。」
「………ヘンタイ…」
ミコトはこのおかえりなさいのキスが少し苦手だ
気持ちよくなりすぎてしまい
ゾクゾクと体が反応して色々と我慢できなくなる
今も例外では無い。ミコトの秘部はもうΩの本能でトロトロになっている
それを気づいているのか気づいていないのかカズオミはポンッとミコトの頭を撫でると足早にリビングにいってしまう
カズオミの後ろ姿を見るミコトは少し不満気だったが、自分から誘う度胸は無い
仕方なく捨てられた子犬のようにカズオミの後ろを着いていった。
「わぁ、今日は肉じゃが?嬉しいな」
テーブルには肉じゃがと数種類の小鉢や味噌汁等がきちんと並べられていた。
カズオミはThe家庭料理というものが好きだ。
なのでミコトが作る料理も家庭の味っぽいものばかり
記憶を失ってはいたが今まで料理していたのか何となくで出来てしまう。
分からなければカズオミが買ってくれた料理本を頼りに作っていた
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