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「あははっ……あ!そうだ!!ちょっと待っててください!」 「え?あ、ちょっと……」 何かを思い出した男性は足早にその場から立ち去っていってしまった 声をかける頃にはエレベーター横の階段へ向かっていっていてミコトの通りにくい声では男性の耳まで届かなかった どうしようと悩んだがとりあえず玄関は閉めておこう そう思いミコトは扉をゆっくり閉めて鍵を閉めようとした。 その時、ピンポーンと軽快な音がまた聞こえた 「すみませーん。お待たせしました」 扉越しには先程の男性の声 急いで玄関扉を開けると軽く息を切らした男性が立っていた 「あの、これ!」 男性の手にはタッパーとラップに包まれた白米があった 「これ昨日作った麻婆豆腐なんですけど、一人暮らしのクセに作りすぎちゃって…。麻婆豆腐丼とかにして食べてください!」 「…………………え…。と、取りに行ってたんですか?」 上の階まで取りに行ってたにしては早すぎる 「俺、中高大と陸上部だったんですよ。だから足には自信があるんです」 そう言われ何となく納得してさしまった。 「今も走ってるんですか?」 「はい!日の出前に家を出ると徐々に日が出てきて綺麗なんですよ?もしかして興味あります??」 「へ?……あ、いえ…運動は、多分得意じゃないので……」 「多分?」 「あ、いえ!こちらの話ですので!!……と、とりあえず麻婆豆腐…なんですが悪いのですよ。お昼ご飯とかで食べる予定だったんじゃないですか?」 それとなく差し出された物を拒否しようとするも 男性はキラキラした目で見てくる 「気にしないでください。これ家にあと3つあるんで!」 一人暮らしで3つとなると確かに作りすぎだ そう思うミコトを見て男性は手に持った麻婆豆腐をミコトの前にグイッと押し付ける 「そんなに辛くもしてないので!!良かったら!」 あまりにグイグイくるので断るに断れず 「…あ、ありがとうございます」 と、受け取ってしまった。 「いえ!!それじゃ!」 受け取ると男性はまた足早に階段の方へ走っていってしまった。 ぼーっとその背を眺めているとある事に気がついた 「あ!!タッパーどう返そう………」 貰ったはいいが容器は返さなくてはいけない だが、ミコト1人での外出は許されていない。そもそも玄関を開けるのも報告していない時点でカズオミがどう思うか… 「……………と、とりあえず今日カズさんは帰ってこないから食べ終えたらそっと上の階の人に渡しに行こう」 リビングに戻り改めて貰った麻婆豆腐を見る 豆腐とひき肉たっぷりで蓋を開けると冷たくても香辛料のいい匂いがした ぐぅぅ~ … 「ゔぅ……食欲には勝てない」 またお腹の虫が悲鳴をあげている これから作るのも面倒臭いので貰った麻婆豆腐をチンして食べることにした レンジで温めるとより一層のいい匂いがした 口の中が唾液にのまれる 生唾を飲み目の前にあるホカホカの麻婆豆腐丼を見てお預けができるほどミコトの精神力は強くなかった 気がついたら半分迄一気に食べていた。 予想以上に量がありミコトは半分でお腹がいっぱいになってしまった 「あー。美味しかった。あとの残りは夜ご飯にしよう…。食べたら……洗って………はぁ~ぁ!」 満腹になると次は眠気が襲ってきた 無理もない、昨夜は悪夢に魘され今日は朝からお風呂の大掃除や洗濯物、掃除機かけとずっと働いていた 元々睡眠不足というのもあり眠気が一気に襲ってきたのだ 抗うことも出来ず気がつけばソファーで横になっていた ふと、先程の男性を思い出す 見た目は本当に普通のサラリーマンっぽいひと。 よく走ってると言うのでそれで体が引き締まって見えるのだろう 「なんか……変な人だったなぁ…」 特質すべきものはそこまでないのに何故だか目で追ってしまう。 そらせなかった… その疑問は今のミコトには何も分からなかった ミコトはあっという間に夢の世界に誘われてしまった。

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