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第6話 午夜、君と
高三の夏休み、天丼を食べてそれから修也の部屋で映画を見てキスをした。
けれど実家だった事もあり、引け目を感じて最後までは出来ずにいた。
俺たちは今までキス以上は進めずにいて、幼馴染の期間が長いこともあり半分家族みたいな所もある。実際に家族ぐるみで仲が良いからかもしれない。
付き合った時に、高校生の内はキスまでと決めていたわけじゃないが、暗黙の了解なのかその先はしなかった。
寂しさもあったが何よりそういうことがしたくて付き合ったんじゃないかと思われることの方が嫌だった。
でも本当はというと天丼デートの時そんな雰囲気になってたからするのかなと期待をしたのも本当のことだ。
ただ片思い歴だけは長いので、卑屈な考えになることもある。
未だに修也と付き合っているのは夢の出来事で夢が覚めてしまったら元の幼馴染として接することになるのでは?とか考えてる。
それに、俺は男だし体を見て幻滅されたら怖い。
ネガティブな思考が止まらないのはいつものことで、もうやめようと思っても簡単には無理だ。
自分に自信がないのが原因なだけなのだが。
今は大学生になったし、一緒に暮らしているしそういうことをしても不思議じゃないがあの日の続きを待っている自分もいる。
自分から言えたら良いのだが、生憎奥手だし何より拒まれたら立ち直れない。
「久〜、風呂空いたー」
「あ、うん」
明日は土日で二人とも学校がなくてこれから家で映画を見ようということになった。
部屋で映画を見るなんてまるであの日の続きのようだ。修也はどう思っているのか、覚えているのだろうか。
「…なんか、緊張する」
湯船に浸かりながらふと思う。
二人で暮らしてから一ヶ月くらい経ち、寝食共にしているのに体の関係がないのはおかしいとまでは思わないが珍しい部類には入るのだろうか。こんなこと他の人となんて比べようがないし、聞けもしない。
大学生になってから慣れるまで忙しくてあまり2人の時間は取れてなかったけど結局、帰る家は一緒だから安心感を感じる。今はそれだけでいいかもしれない。
◇◇◇
風呂から上がると、修也が漫画を読みながら寝転んでいた。
「おー、久 上がったか。アイス買ったんだけど食う?」
「食べる」
「ポテチも買った」
「最高」
家で映画を見るならポテチは欠かせない。
いそいそと修也が冷凍庫からアイスを取り出して俺に渡してくれた。
「ありがと、出た。修也はやっぱりあ○きバーなんだな」
「美味いじゃん。俺、めっちゃ売り上げに貢献してるわ」
「だからってバイト代全部あ○きバーに注ぎ込むなよ?」
「大丈夫。アパートの家賃もあるしそこら辺は弁えてる」
バイト代を何に使おうが自由だ。口ではああ言ってしまったが、別にそこまで心配はしていない。
家賃は半分ずつ出し合っている。
「ポテチにアイスのせると美味いよな」
「だよな、なぁ俺も食っていい?」
「うん」
「食べさせて?」
「…しょうがないな、はい」
「うん、美味い」
「それは、ようござんした〜」
やっぱり家と外では修也のギャップがあり過ぎる。
外だとキリッとしているが家だとダラダラとしてることが多い。大学での様子は分からないけど気を使い過ぎることが多いからその分、疲れやすいんだろう。
家にいる時くらいはゆっくりできたらいいなと思う。
「久、こっち来て」
「何?」
この状況、この体勢、まるであの時と一緒だ。
後ろから修也の体温、シャンプーの匂い。ドキドキするけど不思議と落ち着いて心地が良い。
けど、映画に集中出来るかと聞かれれば嘘になる。
気を紛らわす為に残りのアイスを口に運んだ。
映画のオープニングが始まり集中しようと意識をする。
◇◇◇
二時間ほど経ち、映画もエンドロールが流れた。
今回の映画は当たりだったな。
下を見ると俺の腹をギュッと抱きしめている腕があり、なんだかんだ映画に集中できた自分がいた。
「今回の映画当たりだったなー面白かった、やっぱ修也のセンス良いよな」
「そう?次は久が選んだ映画見よ?」
「えー、俺センスないしなぁ」
「そんなことない、久が選ぶ映画は面白い」
「ハードル上げるねぇ」
「…話変わるけどさ、この体勢、前もした事あるよな」
「あー、確かに前したことあるっけ」
恥ずかしいから惚けたふりをする。
本当はずっと記憶に残っている。
鼓動が高鳴り、変な汗がじわりと出てくる。
「…あのさ、あの時の続きしてみねぇ?」
◇◇◇
何度も口づけを交わし、舌を交差させる。
「…本当、あの時の続きみたいだな」
「…そう、だな」
ベッドに移動して、押し倒され、目の前に修也の顔があってどこに目線を向ければいいのか分からない。
「…その、できるだけ優しくするから。あと嫌だって思ったらちゃんと言ってくれ」
「…分かった」
本当に今日するのかと頭では理解しているものの、緊張しすぎて気絶しそうだ。
でも、修也も覚悟を決めて言ってくれたから俺もそれに答えたい。
「…修也にされて嫌なことなんて一つもないよ…でも、俺男だし体見て幻滅するかもだけど、それでも、その、修也と、したい…です」
伝えたはいいが恥ずかしすぎる。
変に敬語になってしまったし、死にたい。
すると、でかいため息が聞こえた。
「…久、お前ほんとそういうとこ!それ言うなら、俺も男だし、幻滅なんかしない。後、前言撤回。優しくできるか分からないから」
「えっ?!…んっ」
口を塞がれて、Tシャツの中に手を入れられ胸を愛撫する。
胸の蕾を指先で転がすと、甘い声が漏れる。
「…っん、あ、ふっ、しゅぅ、や…」
声を我慢しようにも手で押さえるが、溢れる吐息は止まらない。
「…っあ!」
蕾を口に含み、舌先で転がすようになぞり、リップ音を立て胸に紅い花を咲かせた。
下着に手をかけ、脱がすと自身がゆるく勃ち上がっていた。
それを手に取り、最初はゆっくりと滑らせるように上下に摩る。修也のいやらしい手つきに酔いそうになり、握る手が段々と強くなり射精感が襲う。
「あっ、ゃ、んんっ…!!、しゅうや、はなして、出る、、出るから!」
「…いいよ、出して」
「あ、ぁああっ…!!」
修也の手でイかされ、呼吸が乱れる中、閉じていた目を開けると俺はギョッとした。
自身の精液を修也の顔にかけてしまった。
「修也!!ごめん!目、入ってない?!大丈夫?ほんとごめん!!」
「ん?大丈夫」
修也は動じずに精液を手に取るとそれをペロリと舐めた。
「!?!?」
「なんか、甘く感じる?甘いもの最近食べてる?」
「なななななな」
頭の中が大混乱を起こして中々、言葉が出てこない。
最近、甘いものをよく食べていることを当てられて余計に言葉が出ない。
「な、何やってんの…修也」
顔から火が出そうな程恥ずかしくて、硬直する。
「好きな奴のって、甘く感じるって本当なんだな」
「修也ほんと何言ってんのっ??もう、マジで勘弁してくれ……」
自分は照れ隠しをするくらいしか出来ない。そんでもって調子が狂ってしまう。
「ごめん…脱線したけどさ、まだ続きできる?」
「…大丈夫、できる」
「…じゃあ、足もうちょっと開いてくれる?」
「うん…」
後孔にローションを塗った指を入れ、抜き差しを繰り返す。
「痛くない?」
「うん…痛くない、けど、変な感じ…」
異物感がすごいと表せば良いのだろうか。
「この辺りのはず?」
その時、電流が走ったかのように体がビクリと反応して声が漏れる。
「っ…ん!!」
「ここかな…?」
「あっ…っ!!へん、へんになる…っっ」
「おかしいこと、ないから大丈夫…」
よしよしと頭を撫でて久を落ち着かせる。
気づけば指が三本に増え、受け入れる準備をして慣らしていく。
数分経った頃、後孔から指を抜き近くにあったゴムを手に取った。
「…挿れていい?」
「うん…」
「あっ…!」
「っ…!」
慣らしたとはいえ、後孔はキツく受け入れるのに時間がかかる。
数分かけて挿ったそこは多少痛みがあった。
「…痛くない?」
「少し、痛いけど…大丈夫…」
痛みはあるものの、修也と繋がれた幸せもあり、いつしか快感へと変わっていくのだろうか。
「…ナカ、すごい気持ちいい」
額にキスを落として、修也が呟く。
「動いていい?」
コクリと頷くと、律動される。
優しく、気遣う様に、動く。
優しくできるか分からないなんて、言いつつも修也の触れる手、瞳が優しくて温かい。
「あっ、あっ、あっ」
「好きだっ……久孝」
体温、匂い、音、吐息を感じ熱に浮かされる。暗闇の中で火照る身体を求め合う。
「あっ!ん、…しゅうや、すき、大好きっ…」
いつの間にか修也に抱きついた体勢で思いを口にする。
「!…久孝、大好き」
「しゅうや、もぅ、むり…っっ」
「俺も…一緒にイこう?」
「あっあぁ、あぁああ…っっ!!」
「…くっ!」
◇◇◇
朝、目が覚めて時計を見ると午前9時を回っていた。
横見ると修也が先に起きていて目線が合った。
「あ、修也起きてたんだ…おはよう」
「おはよ、久。身体大丈夫?」
「だ、大丈夫…」
夜中のことを咄嗟に思い出して恥ずかしくなり、語尾が小さくなる。
修也はギュッと久孝を抱きしめた。
「大好きって言ってくれて、めっちゃ嬉しかった…可愛すぎ」
耳元で囁く様に言われ、顔が熱くなる。
「久、あまり言葉にしてくれないから付き合ってるし、気持ちは知ってるけど改めて言われるとめちゃくちゃ嬉しいな」
優しく微笑まれて、多幸感を感じていると何故かぐるるると腹が鳴った。空気を読んでくれ、俺の腹。
「ふっ…ははは、かわいいー朝飯作るわ」
「あはは…俺も手伝うよ」
二人で身支度をして、キッチンに向かい朝食はどうするなんて話をしながらこれまでにない幸せな朝の時間を迎えた。
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