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3 申し出

それで、身の回りの少ない荷物を持ち すごすごと実家に戻ることになった。 もちろん、両親や兄、その嫁からは非難の目を向けられた。 番になっていなかったのは良かったものの、 家族同士の結婚となれば 他の貴族にも知れ渡っている。 それが別れたとなれば、大ニュースだ。 遅かれ早かれ、俺の離婚は知れ渡り、 社交会でも傷物のΩとして白い目で見られるだろう。 破談相手のαは俺ほどじゃないにしても 一線引かれてしまうだろう… 本当に申し訳ないことをした。 相手が相手なら慰謝料を請求されていた。 が、彼はそこの慈悲はあったのか とにかくすぐに家を出るなら問題ないと言われた。 きっともうすでに別のΩに手をつけていることだろう。 俺はこれからどうしたらいいのか。 こんなのに結婚の申し込みはおろか、 社交会さえ呼ばれないだろう。 でも、ずっと実家にいるわけにも行かない。 俺がβなら平民として生きていけたのに Ωが平民として生きるには 世の中の治安はよろしくない。 絶望しつつも、迷惑はかけまいと 日々、身の回りの世話は自分でしつつ 途方に暮れること3ヶ月 なぜか、婚約の話が舞い込んできた。 それも相手はうちよりもはるかに格上の上流の貴族。 断ろうものなら、うちは立場がなくなる。 まあ、断る理由もないし こんな俺に申し出があるなんて願ってもみない幸運だ。 俺は一つ返事で受けることにした。 お相手のαを確かめもせずに。

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