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6 緊張

夕食までの間に荷物の整理をする。 少ない荷物なので全てを収納しても、スペースが余りまくる。 こんな立派なお部屋、使ってもいいのかな。 話によると、隣は頼嗣様のお部屋とのこと。 廊下に出なくても、部屋同士の行き来ができる扉がある。 まあ、使うことはなさそうだけどね。 多分俺の姿を見たら、夜這いなんかする気が起きないと思う。 自室に準備してあった鏡台の前に座り、鏡を見て改めてなんと地味な見た目なのかと落胆する。 せめて可愛い顔をしていれば、バツがついていても価値はあっただろう。 そしてこれまた準備してあった本棚から、本を抜き取り、読み耽っているとドアがノックされた。 「ご夕食の準備が整いました」 と、先ほど案内してくれた女性が顔を覗かせた。 「すぐに向かいます!」 と慌てて立ち上がって言い、緊張しながら後に続く。 「ここがダイニングルームになりますので、旦那様とお食事なさる時はこちらにいらしてください」と案内された部屋は、思っていたよりもシンプルだった。 最後の晩餐のような長いテーブルに座るものだと思っていたが、どっしりとはしているものの4人がけのテーブルだった。 少し緊張がほぐれる。 実家では食事は自室でとっていたから、気軽だった。 それが急に食事会のような場になったら、気苦しい。 このくらいの規模なら、味がするだろう。 案内された席に座ると、「旦那様は着替えてからこちらに向かいますので、少しお待ちください」と女性が頭を下げて部屋を出る。 いよいよ、頼嗣様に会うのか。 俺も着替えれば良かったかも。 この服で大丈夫だっただろうか? 緊張で喉がカラカラだ。

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