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14 ご両親と前夜

それから2週間。 今までのちょこっと畑をして、ぼーっとしたり、本を読んだりする2ヶ月が嘘のように 死ぬほど忙しかった。 頼嗣様も俺と話をするために、仕事を調整しているようで、顔色がよろしくない。 披露宴をするにあたって、頼嗣様のご両親にも初めて挨拶をした。 2人とも、俺に強くあたったりはしなかったが、お母様は腫れ物に触るように気を遣っているのが分かった。 お父様はとても頼嗣様に似ていて、最初の挨拶以外、ほとんど口を効かなかった。 なんだか、嫁いだのが俺で本当に申し訳ない。 せめて、披露宴は失敗しないように 不安なことは都度全て訊くことにした。 すると、途中からお母様は俺が乗り気だと思ったのか、とても喜んで色々とアドバイスをくれた。 依然、お父様とはその後も関わり合いがなく、当日が近づいてきた。 前日の夜、食卓で緊張のあまり食事に手をつけられずにいると、頼嗣様が「流石の私も緊張して喉を通らないな」と苦笑した。 「頼嗣様でも緊張なさるんですね」 驚いて呟くと、頼嗣様は少し俺を睨んで「私をなんだと思っている」と言った。 「も、申し訳ございません」 「冗談だ。昔から表情に出にくいから、よく勘違いをされるんだが、私も感情はある」 「そ、そうなんですか。 じゃあ、今度からは言葉で教えてくださったら嬉しいです」 「言葉で?」 「あ、差し出がましい事を言って申し訳ございません」 「怒ってない。 ……、こんな感じか?」 「えっ、あ、はい。そんなふうに言っていただけたら、俺も少しは理解できるかなって」 「理解か…、お互いのことをよく知るのは良いことだ。善処しよう」 「た、助かります」 俺がそう言うと、頼嗣様は緊張が少しは解けたのか、料理を口に運んだ。 そういう俺も、少し空腹感を覚えて、目の前のトマトの前菜を口に運ぶ。 酸味のある爽やかさが、俺の重い気持ちを軽くしてくれた。 やはり、ここのシェフが作る料理は美味しい。 そのあとは、お義母様が指示した通り、使用人に手伝ってもらって、肌や髪の手入れを念入りにした。 どうやら、頼嗣様も今夜は色々と前準備をしているらしいのが、ドア越しにわかった。 今度は早く眠れるか問題が出てきた。 俺は布団に入って、普段はすぐに降りてくる眠りをヤキモキしながら待つ。 「睡眠不足が一番の敵なのよ!」と息を巻いていたお義母様が瞼の裏に浮かんだ。 ここ最近は、お義母様と話をすることが増え、披露宴の話以外にも世間話や昔の頼嗣様の話を聞いたりしている。 それがいいストレス発散にもなっていて、 俺の最近の癒しのようになっていた。 頼嗣様のご両親はα同士で、そんな格式の高い方をそんなふうに思うのは失礼かもしれない。 けど、親しみやすく接してくれる彼女を思い出すと少しだけ安らいで、眠りに着けそうな気がした。

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