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23 帰宅と羞恥

久々に家に帰って自室に入ると、体が安心したのかへなへなと布団の上にへたり込んだ。 この5日間、いろんなことがありすぎた… 披露宴のお礼とか謝罪とかも、頼嗣様のご両親にしてないし、やり残したことも沢山ある。 でもヘトヘトで動けそうにもない。 布団の上でウダウダしていると、ドアがノックされ、慌てて起き上がった。 俺のお世話係の摺木(スルギ)さんだ。 ちょっと…、というかかなり冷たい雰囲気の女性だ。 最初は怯えてたけれど、実は優しいことを今なら知っているから、だいぶ慣れた。 摺木さんはいつもの平坦な声と無表情で「初夜を迎えられたんですね、おめでとうございます」と言った。   「しょっ…、えっ!?な、なんで知って…」 「ホテルに5日も旦那様と宿泊となれば、誰しもわかるかと思いますが?」 「そ、そうですよね…」 それじゃあ、少なくともこの屋敷中の人たちは、みんな知っているわけか… どんな顔で過ごしたらいいんだ… 俺が頭を抱えていると、「今後は閨事の際は、私どもに言いつけていただければ、ご準備のお手伝いをさせていただきます」と無表情に摺木さんが言った。 「ねやっ…!?こ、今後とかないです!」 「なぜですか?ご夫婦であれば、閨事は避けては通れないでしょう」 「…、摺木さんもご存知だと思いますが、俺と頼嗣様は政略結婚ですよ? 今回は俺がヒートになってしまって、仕方なく頼嗣様が手伝ってくださっただけです。 次は自分で治めるので…」 「はぁ?」 「っ、で、ですから、心配はご無用です!」 「失礼ながら、奥様は鈍感がすぎますね。 なんとも思ってない方が、そんな噛み跡はつけないと思いますけど」 「…、俺はαじゃないから分からないですけど、本能的なものじゃないですか? 事実、番にしてもらえなかったですし」 言っていて、どんどんと気持ちが沈む。 一回きりの夜伽…、もっとちゃんと頼嗣様を感じておけば良かった。 ちゃんと記憶に刻んでおきたかったなぁ… あっという間に終わってしまったんだもの。 ヒートのふりして、シラフの時に抱いて貰えば良かったのに、恥ずかしさが勝ってしまって、正直に「終わりました!」と宣言した。 「ご自分で言って、何を凹んでいるのですか」 容赦ない摺木さんの声に、俺は「優しくしてください」と力無く呟いた。 「旦那様も旦那様です。とっととうなじでもなんでも噛んでしまえばいいのに」 と、恐ろしいことを言いながら、摺木さんは「失礼します」と退室した。 後ろの準備とか、してもらえたら助かるけど(俺の知識では些か不安だし)、準備するだけで使う機会がなければ虚しいだけだ。 それから数日間、夕食だけが頼嗣様と時間を共有する場だったのに、5日間、俺につきっきりだったせいで仕事が忙しいらしく、食事はすべて孤食だった。 なんか、避けられている気すらする。 体を交えたくらいでは、俺たちの関係が変わるわけないんだ。

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