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28 お出かけ当日

「変じゃないですか?」 花ちゃんと出かける日、俺は何故か頼嗣様がプレゼントしてくれた服を着て、摺木さんに確認した。 「旦那様が奥様のために選んだ服です。 似合わないわけがありません」 「…、それはそうかもしれないですけど…、 俺、こんな高い服、着たことなくて」 「大丈夫です。可愛いです」 「…、ほんとかなぁ…」 俺があまりにしつこいからか、摺木さんが棒読み+無表情で言った。 全くもって、信憑性がない。 が、これ以上、摺木さんに聞いても無駄な気がした。 リビングに行くと、頼嗣様が出かける用の服を着て、新聞を読んでいた。 ちなみに、頼嗣様の服も新調したもので、なぜか俺の服と揃えて仕立てた。 少し似たようなデザインになっている。 やばい。 何着か仕立てたうちの、同じデザインの服を選んでしまった… 被っちゃうなんて… 別のに着替えようかと踵を返したところで 「松乃、立ってないで、座ったらどうだ」 と、頼嗣様に声をかけられる。 「あ、はい。失礼します」 席一つ分を開けて、隣に座る。 「似合ってるな」 「えっ、ありがとうございます。 頼嗣様もとてもお似合いです」 俺は急に正面から褒められて、焦った。 顔が赤くなっているに違いない。 水でも飲もうかと立ち上がったところで、 花ちゃんが着いたようだった。 「おはようございます。今日はよろしくお願いします」 馬車から降りて、挨拶をした花ちゃんは、流行りの可愛らしいワンピースを着ていた。 よく似合っていて可愛らしい。 俺の着られているような感じとは全然違う。 「こちらこそ。無理やり同行してしまって申し訳ない」 「いえいえ!むしろ、私がお邪魔じゃないですか?」 「松乃がいつも楽しそうに貴女の話をしているから、ご一緒できて光栄ですよ」 頼嗣様が、パーティーでよく見せた完璧な笑顔で花ちゃんと話している。 春日井家の馬車で出かけるようで、3人で馬車に乗り込んだ。 頼嗣様が、俺をエスコートし乗せてくれたあと、花ちゃんにも手を差し出した。 その姿があまりに様になりすぎていて、俺は思わず目を逸らした。 だって…、完璧すぎた。 かっこいい頼嗣様と、美しい花ちゃんが手を取り合っている様子は、俺の脳裏に焼きついた。 「松乃ちゃんと春日井様のお洋服、ペアルックというものですよね?素敵ですね」 俺と頼嗣様の向かいに座った花ちゃんが、俺たちを交互に見ながら言った。 「花ちゃんのワンピースもとても可愛いよ。 ね、頼嗣様」 俺だけ褒められるのが居た堪れなくて、俺は頼嗣様に同意を求めた。 つい、力が入りすぎて、思わず頼嗣様の腕に手を置いてしまったので、慌てて引っ込めた。 「あ、ああ、そうだな。 お似合いです」 その言葉を聞いて、頼嗣様に同意を求めたことを後悔した。 頼嗣様は優しいから、俺によく「似合っている」とか言ってくれるけど、花ちゃんには少し照れた様子で言った。 本当に似合っている人には、こんなふうに言うのかもしれない。 俺を褒めている時は、無表情だったし。 「ありがとうございます」 花ちゃんは、頼嗣様の言葉に少し照れたように微笑んだ。 俺は、こんなふうに素直にお礼とか言えないし、やはり可愛くはない。 そのあとは、俺がよく分からないブランドの話や宝石なんかの話で、2人が盛り上がっていた。 俺は自分のつま先や車窓を見て、たまに2人の様子を見て、慌てて元の場所に視線を戻したりした。 だって、2人があまりに楽しそうだから…、 2人は自分が邪魔じゃないか?と聞いたけど 本当は俺が1番邪魔なんじゃないの?

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