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36 お誕生会当日

ヒート明け2日後が俺の誕生日だった。 まだ少し、本調子ではないけれど 花ちゃんも来てくれる予定なので 俺は少し無理をして支度をした。 頼嗣様も心配していたけれど、俺がどうしても今日が良いと言ったら渋々頷いてくれた。 なぜかヒートが開けたのに、ここ2日間も頼嗣様の布団で夜を過ごした。 頼嗣様曰く、「何かあるといけないから」とのことだけど、寝るだけなら1人で平気なのに。 頼嗣様がきちんと休息を取れているかが不安。 俺は自分の布団以上にぐっすり眠っているけど。 「よく似合っている」 「ありがとうございます。今日のために、お洋服まで準備いただいてしまって…。 お家で開催ですし、普段の服でも大丈夫ですよ?」 「構わない。私が着せたくて買ったんだ。 …、気に入らないなら急いで作り直させるが?」 「いえ!服はとっても素敵です!」 俺の身に余るってだけ… なんだけど、見た目も完璧な頼嗣様にとっては、服に負けてるかもなんて心配したことないのだろう。 「そうか。なら、快く受け取って欲しい」 「…、はい。ありがとうございます」 招待状の時間通りに花ちゃんがきた。 「久しぶり、松乃ちゃん! お誕生日おめでとう!」 「久しぶり。来てくれて嬉しい。 ありがとう」 挨拶するや否や、花ちゃんに抱擁される。 すごい勢いで飛び込んできたのに、華奢だからか、俺が押し負けることはなかった。 しっかりと受け止めると、彼女の華奢さと柔らかさを感じで、危うく嫉妬しかけた。 俺は確かにガリガリだけど、華奢と言う感じはしないし、こんなに柔らかくない。 花ちゃんの可愛らしさ、女性らしさに、嫉妬してしまいそうになる自分を押しやった。 後ろから頼嗣様の咳払いが聞こえ、2人はどちらともなく、体を離した。 「こんにちは、花さん。 玄関にいないでお上がりください」 「あ、すみません。お邪魔します」 頼嗣様には「久しぶり」って言わないんだ。 やっぱり、先週、会ってたんだろうな。 ズキリと傷んだ胸を抑えて、俺も2人に続いて、ダイニングに向かう。 今日は誕生会という名のお食事会だ。 なんと、頼嗣様のお母様もいらっしゃる。 お父様は辞退したらしいけど。 もしも、頼嗣様のお母様も花ちゃんを気に入ってしまったらどうなるのだろう。 まさか、離婚にはならないと思うけど(春日井の名に傷が付くし)、でも俺は想いを寄せる人がいるならその人と結ばれるべきだとは思う。 そうなったら、あっさりと別れてあげなくては。 でももし、そんなことになれば、俺は2度と結婚はできまい。 実家にも居場所はない。 だから、もしもそうなれば、俺は平民として生きていこうと思う。 「松乃ちゃん?主役なのに元気ない?」 「あっ、ううん!」 花ちゃんに不安そうに覗き込まれ、俺は慌てて首を振ったが、頼嗣様が俺の腰に手を回した。 「つい最近までヒートで寝込んでいたからな。 大丈夫か?キツイならすぐに私の部屋で休むといい」 「えっ!?ヒートだったの?」 「ちがっ!違わないけど、もう終わった! 今日は元気だから心配ないよ!」 なぜか頼嗣様が俺のことを赤裸々に言うので、俺は恥ずかしくて慌てた。 っていうか、なんで休むのが頼嗣様の部屋なの!? 「そ、そう?もし、体調が悪くなったらすぐに春日井様に言いなね。 松乃ちゃんの誕生日なのに、私の方がご馳走が楽しみにしちゃってる〜」 花ちゃんはあまり気にした様子もなくそう言った。

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