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第14話 回復アイテムは必須です
俺の事を信じてくれるか分からないが、口から出任せに大きな賭けに出る
「俺、魔王が復活する日を知っているんだ!だからまずはその日に向けてちゃんと迎え撃つ準備を整えた方が良いと思う」
「それは……本当、ですか?いつなんですか?」
「えっと、それは教えられない。あまり他人に話すと未来が崩れるから。ごめん……」
何となく預言者っぽいこと言ってみたけど、ラシエルは少し考え込むような顔をして黙り込んでしまう
ちょっと無理があったか?でももう言っちゃったモンはしょうがないし……
「……あ、あのさ」
「わかりました。リュドリカさんを信じます。俺は何をすれば良いんですか?」
「へっ……?」
え、そんなあっさり信じちゃうの?
勇者、純粋すぎ!俺のいた現実世界に来たら、一発で悪い大人に騙されちまうよ!
余りにも拍子抜けする返事に言葉に詰まりながらも俺は気を取り直してコホンと咳払いする
「あ、うん……そうだな。まずは、その携帯食糧だけだと心許ないから、もっと回復アイテム……じゃなくて保存の効く食糧を用意した方が良いから……ちょっと待ってて!」
回復アイテムは魔物やそこら辺にある魚やキノコから採り、料理することで手に入る
なのでいくら瀕死になったとしても、これさえあればそれは凌げるだろうと俺は考え、必要以上に回復アイテムを集める事に専念することにした
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「凄いですね。村の近くにこんなに沢山……全て貴重な食材ばかりですよ」
村から出てすぐは、森やら川やらと自然が広がっている
その周囲の貴重なアイテムや能力アップの食材なんかは日が経てば復活するのでよく周回していて場所は覚えていた
「村の住民でもここまで見つけきらないと思います。貴方は本当に一体何者なんですか?」
ラシエルは俺が採った素材を全て抱えて、俺が見つける貴重なアイテムに感心している
夢中で、実際のゲームと同じ場所にある!なんて感動しながら効率よく周回してしまい、そのあまりの手際の良さに不信感を買ったかもしれない
「あ……えと、これも預言者の能力の一つ、かな……」
もう流石にこの理由はキツイかもしれない……と思いつつ、勇者の顔色を伺うとまた優しい笑顔で微笑んでくれる
「何でも分かるんですね。……じゃあ今俺が何を考えているかも、分かったりしちゃうんでしょうか」
「えっ!?それは、えーと……」
ニコリと見せる笑顔が凄く格好良くて眩しくて俺は口吃ってしまう
「いや、流石に分かんないよ。人の心までは……」
「そうなんですか。残念です…………考えが読めたら手っ取り早かったのに」
「……へ?」
手っ取り早いって何がだ!?
一体この勇者は何を考えているんだ!?
ラシエルはめちゃくちゃ気になる発言を仄めかしつつも、なんとかナナギ村周辺の食材をある程度回収出来たリュドリカは、ついでに見つけた木の枝とそこら辺に落ちていた料理器具を使い、回復アイテムを次々に作り出す
「えーと、コレとコレとコレで素早さアップ……コレがスタミナ回復で、後は……」
鍋を使ってただ適当に食材を次々とぶち込んでいく
本来のゲームはそれだけなのだが、そこは仕様なのか頭に思い描いている完成された料理を思い起こすと、何故か自然と手際よく調理を開始している自分がいる
現実世界でも料理なんて全くの無縁だったのに、自分でも驚くほどに次々と頭に浮かぶ料理を完成させていった
「わ……凄いですね。リュドリカさんは料理まで出来るんですか?どれも凄く美味しそう」
「へへっ、まぁ、な~」
隣でそれをキラキラと目を輝かせて見てくるラシエルのそのイケメンぶりこそ、俺にとって一番のスパイスになるよ……なーんて頭で思いつつも口には出さない
「リュドリカさんは俺の顔が好きなんですか?貴方に褒めて貰うと凄く嬉しいです」
口に出してた俺。バカ。
無意識に発した失言に一気に恥ずかしさが上回り手元が滑ってよくある変な料理を完成させてしまった
「もっ、気が散る!からっちょっとあっちで休んでろよ!あと何個か保存食作るから待ってて!」
誤魔化すように声が大きく荒くなり、何だか余計に恥ずかしい
しかしすぐハッとしてもしかして機嫌を損ねたんじゃないかと少し不安になりラシエルの顔を覗き込むと、突然唇に何かが当たる
「んッ…」
「……俺は本当に良い伴侶を貰ったみたいです。あっちで他に食材になるものがないか俺も見てきますね」
突然の口付けに呆然としてしまう
何だか小っ恥ずかしい事を言いながらラシエルは側を離れて狩りに向かう
そしてリュドリカはまた微妙な料理を生み出した
「……なっ……!不意打ちすぎるだろぉ…!」
そのまま五回に一度は料理を失敗させつつ何とか大量の回復アイテムを作る事ができ、リュドリカ達はやっと最初の村から離れる事が出来そうだった
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「まずはどこに向かうんですか?」
「あ、それなんだけどな………ん?」
突然俺の、もといリュドリカの首にぶら下がるパールのネックレスが震える
「これは……」
「どうしました?」
「あっいや、俺……ちょっとあっちで小便!少し待ってて!」
「……?」
すぐにラシエルの元から離れて、木陰に隠れる
このネックレスが震え淡く光るというのは間違いなく……
「魔王からの通信……!?」
そうだ!俺、なんかすっかり気を抜いてたけど今は魔王の側近であるリュドリカ・ユニソンに憑依してしまっているんだった!!
これはリュドリカから連絡が無いのを魔王が痺れを切らせて通信してきたに違いない……どうしよう、無視したらマズいよな……?
とりあえず首にぶら下がるパールを握り、リュドリカが魔王と通信する時の呪文をそれとなく唱えてみる
「えーと、確か……コンタクト!」
『遅い!!一体いつまで油を売っているんだ!!』
「ヒッ!」
怒気のある低い声
間違いなく魔王の声だ
このゲームのラスボス、名前はガヴァルダ
見るからに強そうで言いづらい名である
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