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第16話 魔法の取り扱いは要注意

「はぁっ、しっかし……やっぱり歩きだと時間かかるなぁ……」 南に歩き始めて、僅か数時間で既に虫の息になるリュドリカ ゲームではただコントローラーのスティックを前に倒せば勝手に進むが、現実はそうはいかない 「疲れましたか?俺はまだ余裕なので、おんぶしましょうか?」 「えっ!……………。いや、それは流石に、遠慮しとく……」 「そうですか?ではすぐそこに川があるので、水を汲んできます!少し休んでて下さい」 「あっ、うんっありがとう!」 一瞬ちょっと揺らいだ俺ぇ! やっぱり疲れ知らずだなぁ、流石主人公だわ。 出発の時にスタミナアップの料理を食べはしたが、そもそものフィジカルが段違いだ リュドリカの身体が貧弱なのか?俺も運動はあまり得意じゃ無かったけど……ここまで体力が無いなんて! 「うーん……」 コイツ……王都からどうやって五百キロもかけてナナギ村に足を運んだのだろうか 確か魔法が使えるんだろうけど、空飛んだりとか……ワープしたりとか出来ないのか? 「あ、そういえば……」 ゲームの中でのリュドリカは、いかにもって感じの魔法のロッドを常に持っていたが、俺がこの身体に憑依した時には既に持ってはいなかった 最悪、気絶してる間に野生の動物が持っていったりなんてしていたらどうしようもないのだが、ロッドは何処にいってしまったのだろう 勇者ラシエルの聖剣は、ずっと片手に持っていると邪魔なので背中に仕舞う素振りを見せると、その剣は姿を隠す。 所謂待機モードのように背中には装備しているがただ視覚的に見えなくなる仕様になっている 「まさか俺のは……待機モードでポケットに入ってたり、なーんて……」 とりあえず着ていたローブのポケットを全て確かめてみる 腰の左右のポケットは空っぽで何も入ってはいなかった 「やっぱ無いか~?」 そして胸元の内ポケットに手を差し込んだ時、何かが手に触れた 「……んっ!?これは……」 取り出して一瞥する 俺は勝利を確信した 「あった~~~!!ロッドだ!!」 指で摘めるほど小さなロッドを天高く掲げ、そして次にはふと疑問に思う 「…………これ、どうやって元のサイズに戻すんだ……?」 まるでオモチャのように小さくなってしまった魔法のロッドは、全くの近い道が無いように思えた うーん、と頭を悩ませていると肩に何かがトンと触れる 「ぬわっ!?」 「わ、すいません。驚かせてしまいましたか?」 後ろを振り向くとラシエルが立っていた 両手にはミリタリーボトルのような水筒を抱え、片方を俺に差し出す 「はい、どうぞ」 「あっ……ありがとう」 ロッドを持つ反対の手を出してそのボトルを受け取る その時にラシエルは魔法のロッドの存在に気づいたようだった 「それは……リュドリカさんは、まさか魔法も?」 「え?あ……あぁ、そうだと思うんだけど……元に戻す方法が分からなくて……」 「分からない、……ですか?」 「あっ……」 自分の持ち物なのに、分からないのはおかしいか!? 完全に失言だった。俺はしどろもどろに笑いながら誤魔化す 「つ、ついうっかり忘れちゃって~……あ、はは……」 「昔魔法を使う知人に聞いた話なんですが……」 「えっ?」 「魔法を扱う人間は、ただ頭で念じるだけで使えると言っていました」 「頭で念じる……」 俺はロッドを見つめて、数秒考える 頭で念じる、か……ロッドよ大きくなぁれ!なんてそんな単純な…… 次の瞬間、ボフンッと手から白い煙が上がり、持っていた物の質量が増す 「ぅわッ!?」 ズンッと腕が下がり、そのまま重量に負け無様に転んでしまう そしてもう片方に持っていた蓋の外れていたウォーターボトルが、パシャンと勢いよく身体に降り掛かった 「リュドリカさん!?大丈夫ですか!?」 「うへぇ……つべたい……」 地面に尻を付き水浸しになったことで、濡れた土がドロドロと衣服に纏わりつく なるほど、こんなに重いからいつもは小さいままにしてポケットに仕舞っていたのか。俺はお前とは違うからなリュドリカ。これをバーベルがわりに毎日筋トレして鍛えて、こんな無様な転け方もう二度としないからな!! グチョグチョになった身体が不快でたまらない 肌が冷え、全身がブルリと震える 「ふえっ…くしょいッ!」 「リュドリカさん!服が濡れて……そのままだと風邪を引きます。服を脱いで下さい!」 ラシエルがしゃがみ込み、リュドリカのローブに手をかける 首元の留め具をパチンと取り外し、中に着ていたシャツとサスペンダーを脱がそうと手を伸ばす 「えっ……ちょ!自分で脱ぐっ、から!」 シャツが開けて、上半身が露わになる リュドリカは色白で華奢なので、堅苦しいローブを脱ぐと本当に少年のようだが、実年齢はラシエルより四つも歳上の二十二歳だ ラシエルは開けたリュドリカの身体をマジマジと見て、押し黙る 「………。」 「な、おい……そんなに見られたら恥ずいんだけど……」 「あっ、すいません……」 ラシエルはハッとしてすぐに手を放す 俺は脱がされかけた衣服を引き戻し、杖を持った 魔法が使えるなら、この水や泥も落とせるんじゃないか? 頭で身体を綺麗にしろ!と念じてみる するとまたボフンッと煙が上がった 「……ッ!!」 「……は、……れ?」 煙が消えると、すぐそばにいたラシエルは顔を赤くして手で口を覆う 俺も身体が濡れて気持ち悪い感覚は消えたが、次は妙に風を直に感じる 恐る恐る見下ろすと、いつの間にか全身素っ裸になっていた。首元の爆弾だけを残して 「~~~ッッッ!!?」 何で服まで消えてんだよ!? 念じ方が悪かったか!?悪かったな!? ロッドを握り締め白い肌を真っ赤にさせて硬直する あ、俺今ポールダンサーみたいだ。こんな姿でもそんな悠長な事を考えていると、フワッと頭から何かが被さった

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