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第19話 勇者は貴方でしたよね?

薄暗い夜明けに、窓から日が差し込む。 チュンチュンと小鳥がさえずり、その心地良い音にリュドリカは無意識に薄目を開く 「う……んん」 「起きましたか?お早うございます」 ゆっくりと目を覚ますと、ラシエルの顔が目の前にあった 目覚めたばかりだというのに、むくみ知らずの勇者の顔は、寝起きですら国宝級だ 「へへ……朝から幸せ……」 まだ寝ぼけてうっかりと口を滑らせているが、自覚すらしていないリュドリカに、ラシエルが優しく微笑んで頭を撫でる 「ふふ、俺もです。……キス、しても良いですか?」 「ん、うん……うんにゃ、ちょっと待て……」 徐々に正常な意識を取り戻し、昨日から気づいていたある事を思い出し、触れる直前だったラシエルの唇を手のひらで止める 「俺、思ったんだけど、キスじゃなくて……涙じゃダメか?それなら瓶に詰めて勇者が持ち歩いても、そんなに嫌じゃ、な……」 うつらうつらと目をしばしばさせながら、まるで名案だと言わんばかりにそういって勇者の顔を見る。目が合ったラシエルの顔は、また不服そうに眉を顰めていた 「……な、なんだよ」 「…………ハァ。この際だから、俺もハッキリ言います」 ラシエルが呆れたように深く溜め息を吐いて、背中に腕を伸ばす すると聖剣が浮かび上がり、リュドリカに見せつけるよう差し出してきた 「これは、本当はリュドリカさんのモノですよね?」 「えっ……いや、それは、えっと……」 「ですよね?」 「……はい」 「と言うことは、勇者は貴方なんです。俺はただその代理をしているだけです」 「んん?」 代理?寝起きでよく頭が回らない 考えるよりも先にラシエルは淡々と続ける 「俺はリュドリカさんの為に、勇者のフリをしてあげているんです。現にその勇者の衣も、貴方が着ていますし」 「えっ……そ、それはたまたまじゃ……」 「なので、勇者を演じる代わりに、ご褒美をくれてもいいですよね?」 「ううーん……?」 全くもって意味が分からないが、ラシエルは人の頭が回っていないのを良いことに、ベッドに横たわるリュドリカの腕を引いて強引に自分の上に腹這いに乗りかかる形を取らせた 「ぅ、わっわ!」 「涙なんて要りません。俺はこっちがいいんです」 ラシエルの指が、リュドリカの唇に触れる ふにふにと押さえたり指でなぞって、俺のイエスしか許されない言葉を勝ち誇ったような妖艶な顔で待つ 「ッ…」 全然腑に落ちないが、こうなったら意地でも譲らなさそうなラシエルに、リュドリカはすぐに根負けしてしまう 「も、分かったから……んっ」 ラシエルの唇が、リュドリカの唇に合わさる 何度も角度を変え、その形を確かめるように吸い付いてくる 「ふ…ッ…ン」 唇を舌が割り、歯列をなぞる 息が上手く出来ず口を開けると、すぐに分厚い舌が口腔内に挿入ってきた 「ンッ、んぁ……ふッ……」 ジュルジュルと舌を吸われ、絡め取られて 上顎をザラリとした舌が這うと、ビクリと身体が震える 「ングッ、ふぁ……フッ、んん…」 いつも思うけど、コイツのキスしつこい!! 朝っぱらから致す粘着質なキスに、次第に下半身が熱くなる これ以上は俺も流石にヤバい 「も……ッいい、だろっ!んッ、いい、加減…ッ」 肩を押すが全く止める気配がない それどころか反動するかのようにギュウ、と身体を強く抱きしめられる 「はぁ…ッ…貴方の代りに勇者になりますから、ご褒美は毎日これがいいです。俺と約束して下さい」 「な……」 凄くいいように扱われている気がする! それもこれも全部自分が招いた数々の失言のせいなんだけど! もうこれからは不用意に考え無しの発言は控えようと心に決めた 「そ、そんなの……」 「ダメですか?それならこっちにしますけど……」 ラシエルはチュッ、チュッと頬やおでこに口づけを落としてくる 下からリュドリカの身体に回して抑え込んでいた腕は、次第に太ももへと伸びる 「ちょわ…ッ!?どこ触って…!?」 「俺のお腹に硬いのが当たってる……。キス、そんなに気持ち良かったですか?」 「へっ!?」 いつの間にか自身のソレは膨らみを増していて、ラシエルのお腹に擦り付くとその感触にビクリと身体が跳ねる 「わっ……み、見んなよバカ!これは生理現象だ!!」 ラシエルの手が太ももを滑り、するりと衣服の下に入り込んで、何も身に纏っていない双丘へと這う マズいと思ったリュドリカは、身体を仰け反った 「分かったから!!キスするからぁっ!もうおさわり禁止!!」 「ふふ、焦ってて可愛い。ここも」 身体を仰け反らせた拍子で、自身のアソコも一緒に反り上がりテントを張っていた ラシエルの手が双丘から離れて前に移動してきたのを必死に両手で止める 「ばっ、触るなってば!」 「はぁ。可愛い……本当に食べてしまおうかな」 「ひっ……」 リュドリカはゾッと身体を震わせてそのままベッドから転げ落ちるように逃げた ラシエルはそれを残念そうに目で追う 「はぁ、すいません……何だか凄く身体が漲ってて……早まりました。正直夜まで貴方を抱き潰したい気持ちですが、今日は諦めます」 「だっ、抱きっ…!?」 何処に無限の体力使おうとしてんだよ!? 危うく高いグレードの部屋に泊まって手に入れた最強のバフ効果を至らぬところに活用するところだった。 未だラシエルの熱っぽい視線を感じるが、俺はもう二度とこのグレードの部屋に泊まらないと決心する。俺の貞操がそろそろとても危うい 「あと少しだけ、キスしても良いですか?」 「え、えぇ……?うーん。まぁ、キスなら……少しだけなら……」 そしてまた考え無しに発言したおかげで、せっかくの早起きをしっかり無駄に過ごして、勇者のしつこすぎる接吻に一時間近く耐える羽目になった

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