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第23話 おたから探索
「リュドリカさん……?本当に行くんですか?」
「うん。ここはお言葉に甘えよう!里の長直々に招待をしてくれたんだ、無下にしなくてもいいだろ」
「ですが……」
ラシエルは明らかに怪しい提案に不安げな顔を見せるが、リュドリカは気にせず明るい声色で言う
「だーいじょうぶだって!俺が付いてるし、な!」
その言葉にラシエルは困ったように眉を下げて、気が抜けたのか肩を落とし顔を綻ばせた
「ほんとに、頼りになりますね。貴方を見ていると安心します」
「フン、決まりだな。オレは準備があるから、オマエ達は適当に里の中でも見ていってくれ。じゃあまた二日後に会おう」
パイロはそのまま既に戻って来ていた従者の元へと寄り何やらコソコソと耳打ちをしながら里で一番大きな屋敷へと姿を消した
それを見届けた後に、リュドリカはラシエルの方へ顔を向ける
「時間はいっぱいあるし、この国を探検しよう。お宝のニオイがする!」
「お宝、ですか?」
「うん!宝箱見つけてお金増やさないといけないし!」
「……。いいですね、楽しそう」
ラシエルの最初の村からここまでは宿屋のチートスキルがあった為、宝箱どころじゃなかったからな。取り逃がした分、ここの宝箱は全部手に入れなきゃ
残されたリュドリカ達は、里で手に入るお宝を手に入れる為に居住区エリアを探索し始めた
とは言っても俺は、前世の記憶でどこにお宝があるかは全て知っているので、ラシエルに変に疑われないようにだけ偶然見つけたフリを装いつつ順調に探索を続けて行った
「ふう、この辺のお宝は全部手に入れたかな」
リュドリカは、家屋の立ち並ぶエリアでの宝箱や隠しギミックある換金用貴重アイテムを全て取り尽くして、満足げに額の汗を拭う
ただ後ろを付いていたラシエルは、はぁ。と感嘆の声を漏らした
「宝箱見つけるの上手ですね。まるで犬だ」
「ん?それバカにしてんのか?」
「してませんよ。感心してます」
ラシエルはニコニコと笑いながら頭を乱雑に撫で回してきては、偉い偉いと褒める
「バカにしてるだろ!」
リュドリカはその手を払ってフンと鼻を鳴らした
ラシエルはそんな様子を見て、ボソリと小さく呟く
「……宝箱、好きなんですね」
「そりゃそうだろっ宝箱嫌いなヤツなんて居ないしっ、ロマンが詰まってんだぞ!」
「それも……そうですね」
ふふ、とラシエルは目を細めて笑う。リュドリカはあっと声を上げて宝箱の中身を乱雑に仕舞い込むと、急いで立ち上がった
「早く次の所に行かないと!バル山を一周するには二日じゃ足りないぐらいなんだから」
そう言ってそそくさと次の目的地へと歩き始める
ラシエルは前を急ぐリュドリカの背中に向けて待って下さいと声を掛けながらついてくる
「一周するんですか?かなり時間がかかりそうですが……」
「馬を引いた商人がいたら途中で乗せてもらう。まずはそこの店で野営グッズを買わなきゃな」
リュドリカの指を差した方角には、旅で役に立つアイテムを売られた道具屋が立ち並んでいた
そこで野営用のテントを二セット購入すると、宿屋が近くに無くても夜を快適に過ごす事ができる
「いらっしゃい、今日は何をお求めで?」
「こんちわ~、野営セットを二つくれる?あと耐火の薬草も十個ちょうだい」
先ほど見つけたお宝の貴重アイテムを換金した後に、そこそこ良いテントとバルダタ名産の耐火アイテムを注文した。その横でラシエルは不服そうな顔をする
「二つですか?別に一つでも……」
「このテントは小さいんだから二人だと窮屈なんだよ」
「でもそしたら一緒に寝られないじゃないですか……」
「んなっ!?な、何言ってんだよっ人前でっ!」
アタフタと道具屋のおじさんに目を向けるが、ニヤニヤしたままで特に言及される事はない。それが余計に羞恥心を掻き立てた
「コイツ!夜一人で寝られないなんてガキだよなぁ!?おじさんっ早く!お会計!」
へいへいとやはり道具屋の店主は突っ込む事なく商品を手渡しお会計を済ませる
お前はもう余計な事を言うなとラシエルを小さく小突き釘をさした
そしてリュドリカ達は、バル山の麓を一周する為に、スタミナアップの料理を食べ、バルダタの住居地エリアから僻地へと進んで行った
「ここら辺は道もあんまり整備されてないから疲れるな……」
歩き続けて数時間が経った。人の住むエリアから遠く離れたこの場所は、バルダタ特有の火属性の敵も活発になっており、耐火の薬草が無ければすぐに火の車になっていただろう
「ここは結界の負担もかなり大きそうです。ここに一体何の用が?」
「それは……」
この先に、火焔の国バルダタの初代長老の眠る墓。という場所がある。
そこはバル山の原初の火山弾が落ちた所でもあり、当時は全ての家屋が火山の影響で何もかもが壊滅したが、その場所のみ、一切の被弾を受けること無く唯一無事だった。
それがこの国にまつわるエンドルフィンの加護を初めて受けた人間の生きた場所、初代里長バウロの英雄譚の所以である
そんなところに、俺はあるアイテムを回収する為こんな危険を犯してまで必死になって向かっていた
「時間もあるんだし、滅多に来ることも無い場所を見ときたいじゃん?」
「まあ、そう言われると……そうですね」
それを律儀に伝える事はしなくても良いだろう
強いて言うなら、ストーリーを円滑に進める為の便利アイテムを手に入れる為に向かっている
「あっ……あれだ」
すると漸く、お目当ての場所が見えてきた
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