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第25話 不死鳥の加護

初代里長の屋敷を後にして、リュドリカ達はまたバルダタの国を探索しながら進んでいた 道は更に険しく、出現する魔物もかなり手強くなってきており、ラシエルは苦戦しながらも逐一リュドリカの方へと気を配りながら魔物を倒していた 「うーん、やっぱ格好いいなぁ……あんなおかしなコト言わなきゃ完璧な勇者なのに」 リュドリカはラシエルが倒した敵の残骸から出た素材を拾い集めては、強かな剣捌きで次々と敵を殲滅するラシエルの勇姿に見惚れる 「あれはメルサもやっぱ惚れるな。俺だってもし女だったら……」 最後の敵を倒した事で、振り向いたラシエルとバチリと目が合う 「あっ……ッッゔあっっつ!!」 呆けて手元が漫然な動きになり、まだ熱の籠もった敵の素材を無闇に鷲掴みしてしまう 咄嗟に手を離し熱を逃がすためにブンブンと手の平を乱雑に振った 「リュドリカさん!?大丈夫ですか!?」 その様子を見てラシエルが急いで駆けつけてくる 火傷しないようすぐさま懐からウォーターボトルを取り出しリュドリカの手に振りかけた そつの無いその動きに、リュドリカは目をパチクリとさせる 「…………。ラシエル~お前ってやっぱイケメンだな。スマートな事しやがって」 「貴方に怪我をさせたくないだけですよ」 「……ふーん」 や、ヤバい。変にドキドキしてしまう リュドリカはふいと目を逸らして気を紛らわせようとゴホンと咳払いをする 「……?顔も何だか赤い、冷やした方が……」 ラシエルが更に布を取り出し水を湿らせそうとするのを驚いて必死に止めた 「あっ!いやっ、ただここが暑いだけ!もう大丈夫!」 「ですが……」 「ほんとにヘーキだからっ、……それより!向こうに見えてるの、あれ商人の馬車だ!」 まるで見計らったかのようなタイミングで馬を引いた商人が遠くに見えた アレに乗せて貰おう!とリュドリカはそそくさと立ち上がり商人の元へと駆け出した ラシエルは一人で行かないで下さいとその後を急いで追いかける . 「いやぁ~、悪いね兄ちゃん達。大助かりだわ」 商人の馬車に乗せて貰ったお礼にと、バルダタの辺境地でしか取れない貴重な鉱石の採集に、ラシエルは力を貸していた リュドリカはその横で掘った鉱石の土を拭き取っている 「いつもの半分以下の時間で作業が終わったよ。ありがとな」 「全然気にしないで!それよりおじさんこの鉱石貰っても良い?」 「おぉ。そりゃまた質の良いヤツ選びやがって。構わんよ、兄ちゃんは良い商人になりそうだな」 「へへ~ありがと!」 その様子を見ていたラシエルは、割り込むようにリュドリカの横に並ぶ 「リュドリカさん。ここら辺はもう掘り尽くしたと思います」 「もう!?さすがだなぁ。おじさん、他に何かすることはある?」 「いーや。おかげでもうやる事は終わった。俺はまた来た道を戻るが、お前さん達はどうするんだ?」 「このまま先に進むよ。ここまでありがとう」 達者でな~と商人の男は、馬車を引きながら姿を小さくする リュドリカは貰った鉱石をうっとり眺めた 「どうしたんですか?そんなに見つめて」 「ふふ~これ、貴重な鉱石なんだよ。エンドルフィンの抜け落ちた羽がたまに火山弾に張り付いて落下すると、防御結界を通過するんだ」 「え?それは危険なんじゃ……」 「うん。でも不死鳥の加護を受けた里長の神力はそれすらも通さない。だから人が住める居住区も里長の家を中心に数キロほどなんだ」 そのせいで貴重な鉱石が結界に呑まれて勿体ないんだよな~とリュドリカはぼやく この貴重な鉱石は、居住区から遥か遠くに離れたこの場所でしか手に入れる事が出来ない ラシエルはその言葉を聞いて怪訝な顔をして尋ねた 「それは……俺達は大丈夫なんですか?この辺りに今日は野営するんですよね?」 「それもヘーキ。今日買ったテントにも里長の神力が施されているから、万が一火山弾が通過して落ちてきても守ってくれるんだよ」 だからその分値は張るけどテントは小さいんだよ!とリュドリカはラシエルを少し責め立てるように声を荒げるが、当の本人はリュドリカの態度には敢えてなのか触れて来ずそのまま会話を続けてくる 「なんでその鉱石が貴重なんですか?」 「ん?あぁ、エンドルフィンは不死鳥だろ?しかもずっと燃えてるし。この鉱石にもヤツの加護が微弱に宿ってて。ランタンとかの光源になるんだ」 だから洞窟とかの探索が楽になる!とリュドリカは嬉しそうにその鉱石を撫でながら再び口角を緩めた 「はぁ……物知りなんですね」 感心しながらラシエルは鉱石と俺を交互に見やる 不思議そうに見つめるラシエルに気づき少しベラベラと喋りすぎたかとハッとする 「そ……そう?もうだいぶ日も落ちてきてるしそろそろ野営の準備をしよう」   「分かりました」 リュドリカは先ほど里の道具屋で購入したテントを二つ取り出した ラシエルはそれを見てすぐに横槍を入れる 「……一つですよね?」 「あっ……えと、……そうだっけ?」 何となく気恥ずかしさでとぼけてみる。ラシエルはフッと笑みを零した

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