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第27話 分かりますよね?

「ううん……暑い……」 まだ朦朧と夢と現実を行き来しているリュドリカは、己に籠もる熱を逃がそうと寝返りを打とうとするが、何かに遮られ身動きが出来ない 「んん……?」 寝苦しさと不快感が次第に押し寄せ、段々と意識がはっきりすると、ゆっくりと瞬きを数回する 目の前にあったのは金色の、何か 身体の五感もしっかりしだすと、鼻元を擽るそれが髪の毛だと理解する そして、そこには自分よりも大きな体躯の男が、小さなこの身体に抱きつき胸元に顔を埋めて眠り込んでいる姿であった 「ん、え……ラシエル……?」 ラシエルが、すぐ目の前で寝ている それどころか、まるで子どものように自分の身体を抱き締めて、すぅすぅと寝息を立て無防備に眠り込んでいる 「……ちょ、くっつきすぎ……あつ……」 肩を押しても全く微動だにせず、反動するかのように更に強く身を寄せて来て、異常なまでの密着具合にじわじわと羞恥も募り始める 「あぁ、もう……っ……あっつい!離れろってば!」 もう一度ぐいっと身体を押しのけると、次はいとも簡単に拘束から解放される ラシエルがタイミングよく寝返りを打ったようだった しかしその事で身体の密着が離れ、ラシエルは石のように固まってしまう 「あっ、忘れてた……」 こうなるとリュドリカからアクションを起こさないと、ラシエルが再び動けるようになる事は出来ない リュドリカは無機質になった勇者の姿を見る 「うわ。寝てる姿も格好いい……」 無意識にポケットに手が伸びる いつもそこに納めてあるはずのモノが無くあっと思い出す 「そうだスマホ!……は無いんだったか……勿体ない。昨日のアレも撮りたかったのに!次宿に泊まったらアレを買うか……」 はあ。とあからさまに肩を下げ落胆して、次にラシエルの肩を揺らす 「おーいラシエル~。起きろ~、朝だぞ~」 ゆさゆさと軽く肩を揺らし続けると、ううんと寝惚けた声が漏れる 「起きたか?……うわっ!」 目覚めたのを確認したのと同時に、ラシエルは肩に触れるリュドリカの手を掴み強く引っ張る 態勢を崩したリュドリカはそのままラシエルの身体にもたれかかってしまう 「……おはようございます」 「な、何すんだよっ」 「何するんでしたっけ?」 寝起きにも関わらず、ラシエルは薄く開いた瞼から妖艶な翠緑の瞳を覗かせふ、と微笑む その意味深な表情を見て、リュドリカはもう一つ重大な事を漸く思い出した 「へっ、あっ……」 昨日色んな事があり過ぎて忘れてた~~!! まるで朝の儀式だと言わんとばかりのあの小っ恥ずかしい行為 俺は顔を赤らめぐぬぬと唸る 「いっ、急いで里に戻らなきゃいけないんだからあんまり時間かけるなよっ」 「三十分で済ませます」 「それもながっ……んっ!」 身を引こうと仰け反るのをすぐに大きな掌が背中をぐっと抑え込み身体が密着するのと同時に唇を塞がれる 「ん……っ、ふ…ッ」 反射的に目を固く瞑り、唇も同じように一文字を結んでいると、触れていた唇が、開けないと終わらないですよと囁いてくる それを聞いて顔をもっと赤らめたリュドリカは、諦めたように口を割ると、すぐにヌルリと温かいモノが侵入してきた 「ん、う、んぁ……っ…ふ、……んんッ」 小さなテントの中で、更に身体を密着させて執拗に勇者から口腔内を犯される 暑さで汗が全身に滲むのに、恥ずかしさで更に温度を高める 一分でも長すぎるこの行為を残り数十分だなんて耐えられない 「も……やめ……ッ…ん、ほん、と…に、あちぃんだってっ!」 抱きついて身を寄せるラシエルの両肩を必死に押すが、全くと言っていいほど曲げた肘が伸びない それどころか、背中に回されていた手がスル、と着ていたインナーの中に滑り込んでくる 「ちょ、は……なに、して…ッ…ん、やめ、やめろっ!」 「……わかりませんか?」 「っ……」 突然唇が解放されたと思えば熱っぽい視線のラシエルが余りの至近距離でこちらをじ、と見つめて来ることでリュドリカは驚き戸惑う 「俺が何をしたいのか、何をしようとしてるのか、当ててみて下さい。その予知の力で」 「は……えっ、えぇ?」 何を急に言い出すんだよっコイツは! そうこうしている内にラシエルの手が次に伸ばし始めたのは背中、腰、また更に下の履いていたズボンを通り越して下着の中へと侵入しようとしていた 「何でも分かるリュドリカさんなら、分かりますよね?」 「わっ!?ちょっ、変態!え………っちな、こと…っ!やめ、ろ!」 言い難そうに言葉にするリュドリカの恥じらう姿を見たラシエルは、また嬉しそうにちゅ、ちゅと頬や鼻先に口づけを落とす 「昨日の夜は我慢したんです。少しくらい……」 「や、やだわっ!こんな所でなんて…っ!絶対ヤだ!!」 声を荒げて暴走する勇者を止めることが出来ずに、焦りなのか汗なのかリュドリカは涙ぐむ それを見たラシエルはやっと落ち着きを取り戻したのかリュドリカに伸ばしていた手の動きを止めた 「今のは……ちゃんとしたところならば、良いと言う事ですか」 「は……?」 「こんな所じゃ無ければ、何をしても良いと言う事ですよね?」 「ッ!?そ、そんなこと言ってない!!」 ラシエルは聞き入れたのか否か、これ以上無いほどの笑顔でリュドリカの身体を解放する 嫌な予感はするものの、助かった。なんて表情を露骨に浮かべるリュドリカを他所にラシエルは自身の背中に手を伸ばした 「……邪魔が入らなければ、もう少しくっついていたかったんですが……」 「え?」 テントの外から不吉な鳴き声が聞こえてくる 朝になり狩りを始めた魔物たちがリュドリカたちのいるテントを見つけ近付いてきているようだった 「ここにいて下さい。片付けて来ます」 「あ、うん……」 テントから出る間際に、ラシエルはちゅ、とおでこに不意にキスを落とす リュドリカは目を見開き肩をビクリと揺らした 「なっ、なに!?」 「いえ……物欲しそうな顔をしていたので、つい」 「っしてないから!早く倒してこいよ!」 「ふふ、分かりました」 ラシエルはやっとテントから出て外にいる魔物たちの元へと駆け出した

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