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第47話 おねがいごと

迅雷の国(カンナル)を後にしたリュドリカ達は、まだ数メートルも進まない内に既に一悶着を起こしていた。 原因は言うまでもなくこの先の移動方法についてであり、リュドリカを挟んでは言い争いが勃発する 「ハァ……」 煩わしくも蔑ろにも出来ずに溜息をもらし、リュドリカは両サイドの二人のやり取りを呆然と聞き流している 〈ええい、穢らわしいヤツめ。リュドリカよ、早く我の背中に乗るのだ。此奴が地を這い無様に我らを追う滑稽な姿を高みの見物といこう〉 「お前、何故付いてくる……?自国を捨て人間に擦り寄るなんて神獣の風上にもおけないヤツだ……」 〈フンッ、心配無用だ。我には既に仔もおる。国は子供らに任せて、我は余生を楽しむのだ〉 ラシエルが俺の右腕を強く引き、ライダンがその反対の腕の袖を口で引く 俺はどうにか二人の仲を取り持とうとヘラヘラと媚び諂う 「お前ら~何でそこまでいがみ合うんだよ?これからずっと一緒に旅するんだろ?仲良くしろよ~」 「一緒に旅……?本気で言ってますか?」 〈許容出来ぬ〉 「あははっウマが合わないね~?なーんて……」 「……。」 〈……。〉 二人からの返事は無い 流石の俺もそろそろ限界を感じてきた 思い返してみると確かに、ゲーム本作ならばライダンは勇者と一緒に旅をするわけではない。同じように子に自国を任せた後、自由気ままに一人で余生を謳歌する筈だった ライダンのスキルであるペガサス飛行は、戦闘後に額の角が取れてしまい、それが呼び角(カムホーン)といって神獣ペガサスを呼び出すアイテムになる。移動したい時に呼び、20ルータで一回の移動が出来る。そして用が済んだらまた自由気ままに空へと駆けていく ゲームをしている分には分からなかったけど……この二人って割と業務的で淡白な付き合いで成り立ってたんだな……。 でも移動にお金が掛からないのは捨てがたいし、ライダンがいると戦闘力ゼロの俺にも心強い。 あとなんだかんだラシエルの問題(変態)行動の抑止力にもなりそうだし……。 だからなんとかして、仲良くと言わずとも一緒に旅が出来たらとは思うけど、なかなか良い案が浮かばない 「ほらぁ、旅は道連れとか言うじゃん?」 「じゃあ俺に情けをかけて下さい」 〈フン、我なら人思いに楽に殺してやるがな〉  ああ言えば下らない言い争いが左右に飛び交う 辛抱ならなくなったリュドリカは、両手を掴む二人の拘束から逃れようと強く手を引っ込め立ち止まった 「あーもう、いいよ。お前らの言うこと一つだけ、俺が何でも聞いてやる」 「……えっ?ほ、本当ですか!?」 〈それは真か?〉 「その代わり、次の目的地についてからな。あと、俺が出来る範囲のことしか無理だからな」 一変して二人の表情が驚喜に満ち、それぞれに想いを馳せている その様子を見て俺はまた口でまかせに要らぬ約束をしてしまったと、頭では分かっているがこの場を凌ぐには他にいい方法が思いつかなかった 「早く行きましょう、リュドリカさん。俺の手を持って、先に乗せます」 〈向かう先はサファリアだったか?ここからなら6時間程度で着くだろう。しっかり掴まっておけよ〉 現金な奴らだなぁ……。 ライダンの背中に跨る俺の後ろで、ラシエルは鼻歌交じりにご機嫌だったのが、凄く不穏でしかない しかし今は先を急ぐ事が先決だと割り切ることにする ライダンは行くぞと言うと、突如背中から立派な翼を引き出して、大空へ駆け上がった。俺は次の目的地に気持ちを向ける ーー海中帝国サファリア その名の通り海の底に存在する国で、普通の人間ならば泳いで行くことも不可能な場所だ 海中帝国(サファリア)に行くにはその近くの海岸で海の家を営む海人に、シールドフィンのライセンスを取得するしか方法がない。 シールドフィンとはイルカ型の小型潜水艦で、腹部にサーフボードに模した盾が取り付けてある。ライセンス取得には、それに乗って数々の障害を飛び越え、海中生物からの攻撃を跳ね返す。敵を倒す時に盾を使った体当たり攻撃をするが、それにもタイミングが必要で、失敗すると潜水艦に大ダメージを食らう しかしここから北西に向かった先に存在する海中帝国サファリアの帝王、水龍レインガルロは、魔王の洗脳によって正気を失い、サファリア湾全域に竜巻を起こし荒れ狂ってしまう 荒れた海でのライセンス取得が出来ない勇者は、立ち往生を食らうが海人を説得し、共に水龍レインガルロを鎮める為に邪気払いの盾を手にし陸での仮試験を受ける 見事仮試験に受かった勇者は、海人と共に水龍レインガルロに挑み、正気を取り戻す。 その際にお礼としてレインガルロから何でも願いを一つ叶えてくれる特別な魔法を言い渡されるが、勇者はそこでこの海の安寧を願う 水龍は喜んでその願いを託されたーー と、ここまでがサファリアの攻略内容になるんだけど、本来のゲーム内の勇者、無欲すぎないか? な、の、で、無欲の勇者の代わりに俺がその願いを叶えて貰うことにする。 ラシエルとライダンにあんな突拍子もない約束を申し出たのもその水龍のスキルがあったからだ それに水龍にお願いするよりも、俺にするお願いの方がラシエルはなんだかんだ喜びそうだし……なんて自惚れてみる いつ発動するか分からない首にぶら下がる爆弾を指でなぞり、俺達は海中帝国サファリアに向かった

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