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第50話 みずタイプはでんきに弱い

〈リュドリカ、降りなさい。そして少し離れたところにいるのだ〉 ライダンは腰を下げると、リュドリカをそっと降ろす 目を瞬かせライダンのしなやかな動きをただ呆然とみた 「ライダン?どうした?何で……」 するとたちまち空に分厚い雲が集まり、その中にゴロゴロと稲妻が走る ライダンは遠く帝王レインガルロを見据えて、たてがみを逆立てた 「え……?ま、まさか……」 ごくりと息を呑む。上空に気を取られライダンから目を離したその瞬間ーー 雨雲から激しい稲光が鋸刃のような線を描き、勢いよく海に突き刺した ビシャンッとけたたましい轟音が、沖から遠く離れた陸上からでもはっきりと見て分かる まるで空から舞い降りた燦爛たるドラゴンが、共食いをするかのように水龍に幾度も降り注ぐ 余りに衝撃過ぎる光景に、呆気に取られ身体が硬直してしまう そしてやっと意識が戻ったリュドリカは、ライダンに向かって叫んだ 「あ……わっ、止めてっ!ライダンっ止めて!!」 まさかこんな展開になるなんて夢にも思わなかったこともあり、ライダンの力の威力が測れない このままでは水龍が感電死してしまうんじゃないかと危惧し、必死にライダンを落ち着かせた 「もう大丈夫だから!ライダン!水龍が死んじゃう!」 〈なんだ、始末するんじゃないのか〉 ライダンはスッと雷を止ませると、バチバチと光る身体の電流が次第に引いていく そして得意気にこちらを見た 〈フン、どうだ?リュドリカ、あのウミヘビを鎮めたら願いを何でも叶えると言ったな?〉 「えっ?あっ……えぇ?」 まさかその為にこんな暴挙に出ちゃったの!? 驚きすぎてろくに声も出ないリュドリカと、手柄を取られたと言わんばかりにライダンを睨みつけるラシエル そして同時に同じくその光景を見ては、呆然と佇んでいたカシミアが漸く口を開いた 「なっ……そ、そんな!?レインガルロ様が!!」 荒れ狂っていた海は平穏を取り戻し、恐ろしいくらいに静寂を取り戻した それが何を意味しているのか、絶望に駆られたカシミアは取り乱し錯乱しながら海辺へと走り出す 「あっ!待ってっ俺も行く!!」 「リュドリカさん!?」 〈ムッ、リュドリカ!先に我の願いを!あと我は水が苦手だ、それ以上は近付けん!〉 「あとで絶対聞くからっ待ってて!すぐ戻るから!」 レインガルロの安否を確かめなくては、本当の正真正銘の何でも願いを叶える力が水の泡になってしまう カシミアは勢いよく水中に飛び込み、本来のタツノオトシゴの姿に戻ると、一気に海底へ進みあっという間に姿を見失う リュドリカはキョロキョロと辺りを見渡し、ビーチの端に置かれたシールドフィンを見つけた 「あれだ!」 すぐさまそれに駆けつけシールドフィンに乗り込もうとハッチを開けると、ラシエルがリュドリカの腕を掴んだ 「待ってくださいリュドリカさん!俺が操作しますから!」 ラシエルは焦り息を切らして、一人で乗り込もうとするリュドリカを必死に止める 「あ……そ、そうだな。上手く運転出来る自信ないし……頼む、ラシエル」 リュドリカとラシエルはシールドフィンに乗り込み、海中に潜った 水深2000メートルほど進んだところでタツノオトシゴに変化したカシミアを見つけ、その先に帝王レインガルロが海底に沈んでいるのを発見した 『カシミア!』 リュドリカは機体の中に取り付けてあったマイクに向かって叫んだ。雑魚威嚇用スピーカーから発せられた音を聞き取ったカシミアはこちらに気付く 「あっ……キミたちか。もうソレ乗りこなしているんだね……」 『そんな事より!水龍は!?無事か!?』 「あ、あぁ……まだ、分かんないけど、息はある。すぐに竜宮の騎士団の救命班が来てくれて懸命に治療をしてくれているから、今は無事を祈る事しか……」 カシミアは明らかに動揺をしているのにも関わらず、平静を保とうと声を震わせながらこちらに説明をする。 こんな事態になるなんて予想もしなかったリュドリカも、水龍の安否をただ願う事しか出来ない 『そ、か……本当にごめん。俺達の仲間が……』 「ううん、気にしないで。レインガルロ様はこんな事でくたばるほど軟じゃないよ……きっと大丈夫」 タツノオトシゴの姿になったカシミアの表情までは分からないが、明るく振る舞おうとしてくれているのは伝わった。リュドリカも最悪なパターンばかりを考えてる事を感じ取られ、気を悪くさせないよう明るく振る舞おうと声を掛ける 『そ、そうだよなっ帝王なんだし!絶対大丈夫だよなっ!!そうだ、俺達に何かできる事はあるか!?』 「え?うーん、キミ達に何か出来ること……」 カシミアが頭を悩ませていると、一匹のリュウグウノツカイが声を掛ける 「カシミア様、今宜しいですか?」 「ん、なに?」 「ここで出来うる限りの応急処置は施しました。しかし水圧の影響で心拍と呼吸が安定しません……」 「それは……やっぱり何とかして竜宮の間に連れて行かないとか……」 事の深刻さにカシミアは不穏な表情を浮かべたが、ふとリュドリカ達の乗ったシールドフィンに目を向けた 「そうだ、キミ達に頼みたい事が出来たよ」

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