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第51話 龍宮の間にて

〈ウウン……〉 「カシミア様、ご安心下さい。レインガルロ様の呼吸、脈、安定致しました。私共に出来るのは、このまま療養を続けて目覚めるのを待つのみです」 深海5000メートルに存在する海中帝国サファリア その都にある龍宮の帝王の間、すなわちレインガルロの部屋にカシミアやリュドリカ達はいた。海中帝国サファリアは、家臣(カシミア)のスキルによって侵入を許された者のみ、水中で呼吸が出来る効果を与えられる そして王の間に関してのみ、そこには海水が一切入らない場所となっている。 この場所も家臣の特殊なスキルによって、エラ呼吸の必要な魚達でさえ通常通りに過ごすことが出来た 「うん、ありがとうキミ達。あとは目覚めた時に備えて少し休んでて」 「はい。失礼します」 カシミアに休養の許可を貰った竜宮の騎士団は、頭を下げ龍宮の間から出ていった リュドリカは、そのやり取りを落ち着かない様子で見つめる 「あぁ、キミ達も。本当にありがとう、助かったよ」 海底に沈む意識の無いレインガルロを、海豚型小型潜水艦(シールドフィン)を駆使し、カシミアとラシエルは協力しながらここ、龍宮の間まで無事運ぶことが出来た。 勇者と家臣の共同戦線が別の形でのモノとなってしまったが、二機を使い息の合った二人の操縦は目を見張るものがあった 「レインガルロは無事なのか?」 リュドリカは治療を受け呼吸は安定しているが未だ目覚めないレインガルロを見つめては眉根を寄せる 「うん、まだ微弱な電流の影響が出ているみたいだけど、命に別状は無いよ」 「ほんとか!?よ、良かったあ……」 大好きなゲームの中に出てくる重要キャラクターが、自分のせいで死んでしまうんじゃ無いかと冷や冷やしながらずっと落ち着かなかったリュドリカは、その言葉を聞いて漸く気が抜けたのか地面にへたり込む 「リュドリカさん、大丈夫ですか?」 隣に立つラシエルが心配そうに屈み、リュドリカの顔を覗き込んだ 「あ……へへ、うん、全然平気。別に俺何もしてないし……」 「疲れましたか?もう地上に戻りましょう」 「え、でもレインガルロが目覚めるまでは……」 「あっ、そうだキミ達!レインガルロ様が目覚めるまでサファリアを見ていきなよ。地上とはまた違った良さが味わえるよ」 「!!」 海底に広がる海中帝国サファリア そこのモチーフは言わずもがなあのギリシア神話に出てくる海底に沈んだ帝国そのものであり、石造りの遺跡の数々を、自由自在に泳ぎ見る事ができるその景色は圧巻そのものだった 「み、見たい!さっきはそれどころじゃ無くてあんまり周り見て無かったから……!ラシエル!行こう!?」 「え、でも、泳いで行くのは……」 「お願い~~!」 「うーん……」 リュドリカはラシエルの裾を掴んでは、まるで駄々をこねる子どものようにグイグイと引っ張り上目遣いで懇願する ラシエルはそれでも困ったように返事を渋っていた 「大丈夫だよ。キミたちには水中で息が出来るスキルを与えてるから酸欠になることは無いよ」 「だって!なっほらっ、行こう?」 「ハァ、貴方がそこまで言うなら……仕方無いですね」 「やった!」 遂に根負けしたラシエルが白旗を揚げる リュドリカは喜び舞い上がった 「良し、決まりだね。でもあまり遠くには行ったらダメだよ。荒れた海が元に戻ったことでお腹を空かせた海中生物ヴァリバンが活発になってると思うから」 海中生物ヴァリバンとは、このサファリア湾一帯に生息する魔物のことだ シールドフィンは本来これを倒す為に造られたものだった。 リュドリカは先程までの気の沈み様とは打って変わって好奇心に満ち溢れる 「うん!何かあればラシエルがいるし!すぐ戻って来る!」 「リュドリカさん、絶対に俺から離れないで下さい」 「分かってるよっじゃあ行ってくるな!」 リュドリカは気の進まないラシエルの腕を引いては、龍宮の間から、海中に潜った

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