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漣(さざなみ)

 朝になって、いつも通り悠真は蓮に珈琲を入れた。それを何も言わずに蓮は飲んで、TVから流れてくるニュースを見た悠真がぽつりぽつりと蓮に話しかける。そんないつもの日常だったが、蓮の胸には薄暗いもやのような何かが残った。 「ねえ、あれ、悠真先輩じゃない?」 七海がマンゴージュースを口から離してそう言った。解放的な海の家からは広い海が見渡せた。その人物は人混みに紛れてよくは見えなかったが、蓮はその人物は確かに悠真だと分かった。  ざぶりと一度波に呑まれた後、誰かと笑いながら浮かんだサーフボードに手をかける悠真は、水飛沫のせいか輝いて見えた。 「私の勧めたサーフボード使ってるし、絶対そうだよ。」 そう言って七海は木で出来たボロイ椅子から立ち上がった。七海が悠真に近づくと、悠真はもう一人の人物と楽しそうに笑った後、蓮の方に顔を向けた。蓮は飲んでいたサイダーのストローを噛んだ。だんだんと3人が近づいてくるのを蓮は頬杖をついて見ていた。 「初めまして。蓮君。俺、柊颯太(ひいらぎそうた)。よろしく。」 濡れた前髪をかきあげながらそう言った颯太は確かに爽やかな好青年だった。薄茶色に染めた真っ直ぐな髪が彼によく似あっていた。 「よろしく。」 ぶっきらぼうにそう言う蓮に悠真が言った。 「な、イケメンだろ?」  勝ち誇ったように言う悠真に苛立って、蓮は席を立とうとしたのだが、 「なあなあ、蓮も悠真と一緒の学校何だろう?学校での悠真ってどんな感じ?」 そう明るく言われると、蓮も席を立てなかった。  その日は颯太はシャワーだけ浴びて帰っていったのだが、それから何度か颯太は2人の家に来るようになった。悠真はよく笑うようになったし、サーフィンも上手くなった。蓮はそれが本当に不愉快だった。

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