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君との結婚式7

 式場となるガーデンには既に両家族が揃って椅子に座っていた。  そして牧師さんは海を背に優しい笑みを浮かべて俺たちを待っている。  俺が女性なら父親と後から行くんだろうが、俺たちは男同士だ。だから、2人で手を繋いで牧師さんの前まで歩く。そこまで行って俺は緊張がピークに達した。 『立樹。あなたはここにいる悠を病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も妻として愛し敬い慈しむ事を誓いますか?』 『誓います』 『悠。あなたはここにいる立樹を病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も妻として愛し敬い慈しむ事を誓いますか?』 「え?! えっと」  イエスと答えるだけでいいのに、緊張でそれさえわからなくなってしまった。  牧師さんは微笑みながら俺の返事を待っている。 「悠、イエスだよ」 「あ! い、イエス」  俺がやっとイエスと言うと牧師さんははホッとした顔をして式を続ける。  日本で買ってきた指輪を交換し、誓いのキスになったとき俺はカチンカチンに固まってしまった。  確かにディープキスじゃないにしたって、人前で、しかも親の前でキスをするなんて無茶だ。  だけど、立樹の顔はどんどん近づいてくる。 「悠、目閉じて」  立樹が小さな声で言う。  緊張のあまり目を開けたままだった。  立樹に言われて、今度はぎゅっと目を閉じる。それに立樹が小さく笑った気がするけれど、よくわからない。  立樹の唇はほんの一瞬、軽く触れたかと思うとすぐに離れていった。それで安心して目を開けると立樹が笑っている。  それを見て少し緊張がほぐれてきた。小さく息を吐くと花びらが降ってくる。フラワーシャワーだ。  これで式は終わり。そう思うと完全に緊張がほぐれ、俺はその場にヘナヘナとしゃがみ込んでしまった。 「悠、大丈夫? ほら、手」  立樹は甘い笑みを浮かべて俺に手を差し伸べてくれる。その手に捕まってやっと立ち上がる。もう、俺、恥ずかしすぎる。  と、そこで兄さんにカメラマン役を頼んであったことを思い出し、兄さんの方を見るとファインダーを覗きながら笑っていた。  写真に撮られた! そう思うと格好悪すぎてガクリとしてしまう。これって人前でキスをするより恥ずかしい。  そして式が終わるとウエディングフォトの撮影に移る。  参列した家族はこれで帰って行き、俺と立樹は背後の教会へと行き写真を撮っていく。  教会の中は白亜で床の赤いカーペットが映える。教会ウエディングも良かったのかな、なんて思ってしまうくらい綺麗な教会だった。  写真を撮るのも緊張しないわけではないけれど、いるのは俺たちとカメラマン、スタッフさん2人だし、さっき脱力しきった後だからか比較的落ち着いてポーズを取ることができた。  教会内部、教会入り口、そして先ほど式を挙げた庭園にあるシンボルツリーでの撮影と続いた。そして車でビーチに行くとちょうどサンセットの始まりだった。  ビーチはあまり海水浴客のいない静かなビーチだったので、あまり人に見られることもなく淡々と進められ、最後の一枚を撮り終わった後には大きく息を吐いてしまった。 「お疲れさまでした。サロンへ戻りましょう」  スタッフさんに誘導されて行きと同じリムジンでサロンに戻ると疲れが一気に出てきた。 「さすがに疲れたね」 「ほんとに。もうなにもしたくない」 「でも、夜はみんなでステーキだよ」 「行くまで少し部屋で休める?」 「んー少しなら大丈夫じゃないかな? 遅めの時間にしておいたから」 「良かった」 「じゃ、帰ろう」 「うん!」  そう言って差し出される立樹の手に手を重ねた。

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