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番外編5
「部屋からも海が見える!」
「お風呂からも海見えるんだよ」
「お風呂からも?」
そう言われて急いでお風呂に行くと、ばっちり海が見えた。もっとも夜だと海は暗くてあまり見えないけど、このホテルの灯りで少しは見えるだろうか。海を見ながら湯に浸かるなんて贅沢極まりない。
「あぁ、写真通りだ」
立樹が俺の後ろに立っていた。
「なぁ、ここ、かなり奮発しただろ」
「まぁ、そこそこね。ほんとは近場で海外行きたいなと思ったんだけど、海外で少し奮発するなら国内で奮発した方がいいかと思って。それに近場でも海外だと1日は有休取る感じになるかなと思って。でも国内ならその必要ないからさ」
「確かにそうかもな。韓国なら三連休で行けるけど慌ただしいもんな」
「だろ。結婚式がハワイだったからサイパンとかグアム考えたけど有休必要だろ。なら三連休で来れて南国気分味わうなら宮崎かなって思ってさ」
「あーサイパンとか行ってみたい。グアムは行ったことあるけどサイパンはないんだよ」
「まぁそれは今後ね。今回は国内で贅沢旅行」
「ほんと贅沢だな」
「嫌だ?」
「ううん、そんなことない。考えてくれてありがとう」
「で、下には温泉あるし、貸切露天風呂もある」
「露天風呂貸切したって言ってたけど何時から?」
「17時から」
「それまで探検したい!」
俺がそう言うと立樹はくすりと笑った。確かに探検なんて子供じみたこと言ってると思うけど、だってこんな高級ホテルなんてもう来れないかもしれないじゃん? だから見てみたい。
「そしたらさっきのクラブラウンジでお茶してから行こうか」
「うん!」
そのまま温泉に行けるように2人分のタオルと下着をトートバッグに入れる。貸切露天風呂に入れると聞いたから持ってきたのだ。だって廊下をタオル持って歩くの嫌だったし。
バッグを持って先ほどチェックインしたクラブラウンジへと降りる。クラブフロアは一般宿泊客には入れないのでゆったりとできる。
窓際の席に座り海を眺める。海の景色っていいよな。だから結婚式もハワイでのガーデンウェディングを選んだし。
「明日の夕方を楽しみにしてて」
コーヒーに口をつけながら立樹が言う。
「明日の夕方? なにかあるの?」
「明日満月なんだよ」
「満月がどうしたの?」
「月の道って言うのが見れるらしい」
「月の道?」
道って道だよな? 満ちる方じゃないよな? 立樹がなにを言っているのかさっぱりわからない。
「海から月が昇って月光が海に映ると、月に向かってまっすぐに続く月の道が出来るらしい。それが見れるのが明日なんだ」
「そうなんだ。楽しみ。それって海が見えるところならいいの?」
「うん。海辺でもいいし、このフロアでもいいし、部屋でもいいよ。月の見えるところならどこでも」
「そうか。そんなのあったら見たくなるよな」
「だろ?」
旅行先といいホテル選びといい部屋選びといい、立樹がすごく考えてこの旅行をプランしてくれたのがわかる。一緒に暮らしてるのに、こんな旅行を計画してくれてるなんて知らなかった。こうやってスマートにエスコートできるあたり立樹ってすごいな、と思う。モテるはずだよな。
「立樹、ありがとう」
「楽しんでくれたらそれで十分だよ」
そう言って笑う立樹に胸がキュンとする。立樹と出会えて、将来を誓えてほんとに幸せだなと思った。
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