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番外編6
17時になり、貸切露天風呂へと移動した。貸切風呂というサービスは他の宿泊施設にもあるので単に他の人が入ってこないだけのお風呂だと思っていたら中には畳敷きの和室がありゆっくりと休むことができる。休み休み温泉に入れるということだろう。
こんなにゆったりできるけど、利用時間はどれくらいなんだろう。過去に貸切風呂を貸し切ったことはあるが30分だった。こんなにゆったりできるところで30分なら寂しいなと思いながら立樹に訊いた。
「貸切って30分?」
「いや、90分」
「え? 90分?」
「そ。ゆっくりできるだろ。ずっと入ってると湯あたりするから、時々あがってここで休めるよな」
「すごい贅沢なんだけど。高そう」
「でも、ここの貸切代って宿泊費の中に入ってるんだよ。あの部屋だから無料で、他の部屋だと6千円だったり3千円だったりするけど、クラブスイートだと1回無料なんだ」
「スイートなんて宿泊費高いけど、この貸切露天風呂がタダになるのはいいね。のんびりお風呂入れる。あ、お茶がある。飲む?」
「あぁ」
お茶を淹れようとポットを自分の方に向けようとすると、スッと立樹が自分の方へと向けて急須にお湯を入れた。
「立樹! 俺が淹れようとしたのに」
「悠はゆっくりしてればいいの。疲れてるだろ」
「いや、俺は昨日帰ってきたのそんなに遅くないから。立樹の方が残業で遅かっただろ」
「俺は大丈夫だよ」
「もー。立樹は俺に甘すぎる」
「悠を甘やかすのは癒やしだからな」
「よくわかんない」
「まぁ、エスコートされついでに甘えててよ」
パートナーシップ宣誓から5年経っても日々の食事はほとんどが立樹で。俺が作るのは立樹がよっぽど遅いときだけだ。多少の残業なら俺の方が早く帰ってきても作ってくれる。俺は相変わらず甘えている。そして旅行先でも俺を甘やかすのか。
俺を甘やかすのが癒やしっていうのはよくわからないけど、イヤイヤやってるわけじゃないというのはわかる。前に訊いたときは楽しいと言われた。
立樹が淹れてくれたお茶をフーフーと冷ましながら飲む。うん、いいホテルだからかお茶も美味しい。
「そうだ。夕飯は19時に鉄板焼きのレストラン予約してあるから。宮崎牛だよ」
「やった! お肉! しっかりお風呂入ってお腹空かせておこう」
細かいところまでしっかりと予約されていて、完全に立樹にエスコートされている。ほんと立樹っていい男だなと思う。こんなにいい男が傍にいてくれるってすごいしあわせだな。そう感じて左手の薬指にはまる指輪を見る。この指輪を購入した日のことは今でも覚えてる。男2人で指輪を選ぶということが恥ずかしかったんだ。
「どうした。指輪を見て」
「んー。こんなにいい男と結婚式挙げたんだなーと思って。ついでに指輪を買ったときのことも思い出した」
「俺こそこんなに可愛い人とパートナーシップ宣誓したんだなって思うよ。指輪はな。パンフレット貰って来てっていうのは正直笑えた」
「ひどーい。もう俺温泉入る!」
からかわれて服を脱いで1人で温泉に浸かる。すると立樹は待てよと言って慌てて入ってきた。
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