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第2話 家に連れて行く
ヘアカタログを2.3冊見せた。ヤマトが選んだのは割と無難なミディアムで上を長めに内側を短くしたサラサラヘアだ。色はアッシュ系のグレー。
「勝手にやったけど、どう?」
「わぁ凄い、オレじゃないみたい。カッコいい!」
「カッコいいのはキミだよ。」
顎をクイッと掴んで顔を見た。
もっさりした髪をきれいに整えて切ったらかなり可愛い顔が出て来た。
(自分の可愛らしさ、わかってるんだろうか?)
柔らかな色味の白っぽいヘアカラーが似合う。
「あのう、洋服買いに行きたいんだけど、どこに行けばいいの?」
(こいつはとんだ田舎者、なのか?)
「俺、今日は君が終わったらオフだから、一緒に行ってあげようか?」
(俺としたことが、初対面で随分親切だ。
それというのもこの少年が、俺の好みにピッタリだったから。)
ヘアスタイルだけ今風の、服装は地味なジーパンにパーカー、スニーカーっていう中学生みたいな格好で、ヤマトのスタイリスト魂に火がついた。
渋谷には電車で行った。初心者を連れ回す。
(弟みたいで可愛いな。)
「どこに住んでるの?」
「茨城の方。」
「の方?」
「でも、東京に住むんだ。」
親に黙って出て来たわけじゃないようだ。
(二十歳だもんな。何だって出来る歳だ。)
「歩き疲れたな。どうする?
タトゥーは明日にしなよ。
今日はクラブにでも行くか?」
でも荷物が多い。
「どこに帰るんだ?その大荷物持って。」
全身コーデでブーツまで買った。持つのも大変だ。
「おれ、今夜泊まる所決めてないんで、とりあえず、どこかのビジホないかな。」
ヤマトは少し考えた。こいつを離したくない。可愛い顔にほだされた。
「俺の部屋に来るか?
泊めてやってもいいぞ。同居人がいるけどな。」
「ホント?嬉しいな。じつは俺、ビジネスホテルとか泊まったことないんだ。」
(あぶねぇな。俺じゃなかったら何されたかわかんねぇぞ。)
「俺の家、代官山だから、戻ろう。」
ヤマトは売れっ子スタイリスト。結構稼いでるから、割といいマンションに住んでいる。
連れて帰った。エントランスでキーをかざして中に入った。レセプションを通って、エレベーターで15階だ。タワマンというのではないが、それなりの所だろう。
「綺麗なマンションだね。でも部屋は汚い。掃除してないね。きれいだけど汚い。」
「ああ、二人とも忙しくて、な。」
散らかった部屋に荷物を置いて、ソファに座る。
「おまえ、自己紹介しろよ。」
キミからおまえに呼び方が変わった。
「あ、柳奥命(りゅうおくみこと)二十歳。
高校を出てからずっと引きこもり。親が世の中見て来い、って。」
「いい親だな。
ミコトか、カッコいい名前だな。」
「お兄さんは何才?お名前は?」
「おう、訊問みたいだな。
俺は春日井大和(かすがいやまと)。
お兄さんじゃなくてヤマト、でいいよ。
28才だよ。美容師歴は10年。
ついでに言うと俺、ゲイだから。同性愛者。わかるか?
身の危険を感じたか?」
笑ってしまった。
「でも、安心してくれ。恋人がいるから。」
「男?」
「そう、男だ。ここに一緒に住んでる奴だ。
この近くでバーをやってるよ。
帰るのは夜中だ。」
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