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第8話 ディアボラ
13階のエレベーターの扉が開くと、目の前に別世界が広がる。その時々のテーマに合わせてデザイナーが変わる。
今度はどんなコンセプトでどんな設らえになるのか?毎回テレビの取材が入って話題を浚う。
空間演出デザイナーの名前も爆上がり。一流デザイナーの登竜門のようになっている。
菫ちゃんが、若手の新人しか使わないからだ。
「手垢の付いた有名なだけのデザイナーはいらないのよ。無名でも将来を買うわ。」
エレベーターが開くともうその雰囲気に飲み込まれそうだ。遠く聞こえる太鼓の音。動物の声も聞こえる。
草原に立っているようだ。風さえ吹いている。今夜のコンセプトはアフリカ、だ。
遠近法を使っているのか、錯視を狙って様々な仕掛けがあるらしい。
遠くまで見渡せるようなサバンナは、思いの外数メートルで終わり、徒歩で通り抜けた。
バオバブの木に囲まれたコロニアルスタイルの建物に入って行くと、もうここは建物の三階になっている。窓の外の景色は高い位置からのものだ。キリンが覗いている。
広大な敷地に建っているように見えるが、全てが目の錯覚。錯視を利用して巧妙に設計されている。実際にキリンは居なくてもホログラムで本物に見える。
テーマパークのようだ。子供が入れないのはかわいそうな気がする、そんな楽しさだ。
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