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第9話 面接

「いらっしゃい、待ってたよ。 ミコトくんだよね。」  タケルのバーで会ったことのある淳と零士が出て来た。  キョロキョロしていると、隠し扉から、奥に案内されて従業員の控え室に入った。  凄く広くておしゃれな所だ。ゆったりとしたソファがある。その向こうには鏡の並んだ美容院のようなスペース。 「凄い。控え室って言ってもウチの美容室くらいある。」  ヤマトが感嘆の声を上げた。付き添いでこんな内輪の場所まで案内されたが、豪華で驚いた。  普通、裏は手抜きで酷いのが当たり前だが。 「オーナーがホストは貧乏くさいのはダメよって。私生活も優雅にしなさいって言うんですよ。」 「いいオーナーだな。 普通このスペースがあれば、もっと客を入れよう、なんて思うもんだが。」 (店全体がリッチなんだな。)  参考にしたい、とジロジロ見まわした。 「お待たせしました。」 面接の担当者か?  タケルの店で会ったことのある円城寺とかいう男が名刺を出した。 『クラブ ディアボラ    代表 円城寺 隼人』 と書かれている。ヤマトも仕方がないので美容室の名刺を出した。 『タイニイ・アイアン  スタイリスト 春日井 大和』 あまり名刺を出す事は無いのだが、この男はこういうのに拘りそうだった。 「いやぁ、美容師さんなんだ。 ウチの店にスカウトしたいくらいイケメンですね。」 (めんどくせぇな、早く本題に入れ。)  案内してくれた淳がフルートグラスを運んできた。 「どうぞ、召し上がって。」 「今日のシャンパンは何?」 「あ、社長。モエ・エ・シャンドン2015です。 うちではウェルカムドリンクはモエが多いですね。」 「どうぞ、ミコトくん。 二十歳ならお酒は飲めるよね。  ところでいつから働く?」

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