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第21話 スナック『再会』

「あら、いらっしゃい。1人?」 「そう、1人。」 「タケルを取られた?」 ママが言う。  バンッ!カウンターを思い切り叩いた。 「図星、ね。いい男だもんね、タケル。」 ママが、ジェムソンのボトルを出したけどほとんど残っていなかった。 「この前、来た子、お酒強いわねぇ。一人でこんなに呑んだんだ。」 「クソ生意気なガキだ。もう一本入れて。」 「あら、本当にあの子にタケル取られたの?」 「まだ、取られてねえよ!」 「まだ?ヤマト可愛いわね。 あたしと浮気しようか?」  前後不覚に酔っ払った。気が付けば1人で2階のママのベッドの中だ。元青線だったこの界隈は、今は2階を住居にしている店もある。  青線というのは、1階が酒場で、2階で客を取る売春宿だ。昭和30年頃から、売春防止法で禁止された営業形態だが、そこは魚心あれば水心、世界最古の商売(売春)は人類が滅びるまで無くならないだろう。今もこんな形で残っている所はあるらしい。  もちろんママはそんな商売はしていない。自分が酔っ払って、帰るのが面倒な時、少し休めるようにベッドがあると言っていた。 「誰も、ここには連れ込まないわ。」 (別に好きな男を連れ込むの事に、俺が文句を言う立場にない。) 「ヤマト、大丈夫?ここに泊まってく? あたしは帰るわよ。 鍵は店のドアのポストに入れておいて。  じゃあねぇ。」 (ああ、置いて行かれた。浮気もダメか。 俺モテると思ってたのに・・・ もう少し眠ろう。目が覚めたら世界が終わってますように。)

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