25 / 101

第25話 バー高任

 ディアボラの営業時間が終わった。アフターの声もかからないミコトが帰ろうとすると、レオンが声をかけて来た。  ずっとナンバーワンを張っているレオン。 凍夜とは違ってアフターには付き合わないで急いで帰る。ダーリンが待っているらしい。  週に3日しか来ないし、女性とは店以外で付き合わない。固い人なのにファンが多い。それも太客ばかり。 「もう、帰るの? 僕とちょっと付き合わない?」  タクシーに乗ってもすぐ近くで申し訳ない感じだ。ワンメーター。 「僕のパートナーはバーをやってるんだよ。 麻布の『バー高任』。たまには僕と飲もう。  ミコトってすぐ帰っちゃうから今まで話す機会が無かったじゃん。」 と言うわけで連れて来られたバー。 「いらっしゃい。 礼於、お店の人? 珍しいね。礼於が誰かを連れてくるなんて。  カウンターにどうぞ。」 レオンの本名は礼於というらしい。 「ここのマスター、スグルだよ。 僕の旦那。」 「スグル、ミコトだよ。新人。 いつも真面目だから,夜遊びに誘ってみた。」  ミコトは見惚れてしまった。レオンがイケメンなのはもちろんだけど、ゲイだったんだ!という驚き。それ以上にマスターのスグルさんが素敵で、少しタケルに似ている。タケルよりカッコいい。タケルごめん。身体が凄い。筋肉。分厚い胸板。背の高さはタケルと同じくらいか?  188cmくらい?デカい。タケルもイケメンだけど、ちょっとタイプが違うかな。  切れ長の目が素敵だ。そして長い髪。一つにまとめていて、タケルみたいだ。 「ウチはスコッチのシングルモルトがお勧めなんだけど。飲んでみる?」 「あ、おれ、飲んだ事あります。 アードベックとかありますか?」 「よく知ってるね。 アードベック10(テン)でいいかい?」 「はい、トワイスアップで。」 「ウヰスキーはよく飲むの?」 「おれ、今居候していて、その部屋の持ち主が、やっぱりバーをやってるんです。  色々教えて貰って。」 「へえ、何処?」 「代官山です。」 「あ、タケルの店かな? テン・ノット・クラブ?」 「知ってるんですか?」  やっぱり同業だからなのか、知り合いだった。 「タケルのところにいるのか。 ヤマトも一緒でしょ。 遊びにおいでってお伝えください。」  強かに酔っ払って、タクシーを呼んでもらって帰って来た。

ともだちにシェアしよう!