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第25話 バー高任
ディアボラの営業時間が終わった。アフターの声もかからないミコトが帰ろうとすると、レオンが声をかけて来た。
ずっとナンバーワンを張っているレオン。
凍夜とは違ってアフターには付き合わないで急いで帰る。ダーリンが待っているらしい。
週に3日しか来ないし、女性とは店以外で付き合わない。固い人なのにファンが多い。それも太客ばかり。
「もう、帰るの?
僕とちょっと付き合わない?」
タクシーに乗ってもすぐ近くで申し訳ない感じだ。ワンメーター。
「僕のパートナーはバーをやってるんだよ。
麻布の『バー高任』。たまには僕と飲もう。
ミコトってすぐ帰っちゃうから今まで話す機会が無かったじゃん。」
と言うわけで連れて来られたバー。
「いらっしゃい。
礼於、お店の人?
珍しいね。礼於が誰かを連れてくるなんて。
カウンターにどうぞ。」
レオンの本名は礼於というらしい。
「ここのマスター、スグルだよ。
僕の旦那。」
「スグル、ミコトだよ。新人。
いつも真面目だから,夜遊びに誘ってみた。」
ミコトは見惚れてしまった。レオンがイケメンなのはもちろんだけど、ゲイだったんだ!という驚き。それ以上にマスターのスグルさんが素敵で、少しタケルに似ている。タケルよりカッコいい。タケルごめん。身体が凄い。筋肉。分厚い胸板。背の高さはタケルと同じくらいか?
188cmくらい?デカい。タケルもイケメンだけど、ちょっとタイプが違うかな。
切れ長の目が素敵だ。そして長い髪。一つにまとめていて、タケルみたいだ。
「ウチはスコッチのシングルモルトがお勧めなんだけど。飲んでみる?」
「あ、おれ、飲んだ事あります。
アードベックとかありますか?」
「よく知ってるね。
アードベック10(テン)でいいかい?」
「はい、トワイスアップで。」
「ウヰスキーはよく飲むの?」
「おれ、今居候していて、その部屋の持ち主が、やっぱりバーをやってるんです。
色々教えて貰って。」
「へえ、何処?」
「代官山です。」
「あ、タケルの店かな?
テン・ノット・クラブ?」
「知ってるんですか?」
やっぱり同業だからなのか、知り合いだった。
「タケルのところにいるのか。
ヤマトも一緒でしょ。
遊びにおいでってお伝えください。」
強かに酔っ払って、タクシーを呼んでもらって帰って来た。
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