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第28話 凍てついた夜 2

 凍夜の指名席にいたヘルプ達は、本指名を入れてもらって、丁寧に接客をした。  凍夜の客はみんな気をきかせてくれる。 ミコトは結局最後まで凪の席にいた。凪もかなり酒が強いようだ。  凍夜がステージで一曲歌って、凪の席に戻って来た。 「凪ちゃん、どう? ウチの新人を独り占めした気分は?」  凪は泣きそうな顔をして凍夜にハグしている。 「凪のために歌ったんだよ。 ラブミーテンダー。」 ハスキーなイケボで囁く。凪は凍夜の胸に顔を埋めて泣いている。 (寂しかったんだね。オレじゃダメだった。) 「凍夜のバカバカ。 今夜は朝まで一緒にいてくれる?」  他の指名客を一人一人送り出すと、凪の席に戻って来た。肩を抱いて何か囁いている。  離れたテーブルでひときわ大きな歓声が上がった。シャンパンタワーだ。ディアボラでは、一回百万円のシャンパンタワーは、レオンのいる金曜の夜の恒例になっている。  レオンの太客の誰かが必ず入れてくれる。そして振る舞いシャンパンでさらに盛り上がる。  抜け目のない円城寺が、出されたシャンパンの数をチェックしている。  シャンパンはドゥラモット。サロンに次ぐ一級品。究極のブラン・ドゥ・ブラン。  通常のタワーよりもかなり割り高だ。レオンのためなら金に糸目は付けない、という客がたくさんいるのだ。  週に3日しか来ないレオンが売り上げトップ。 毎日、同伴しても、指名を取っても、凍夜は二位だ。指名数は凍夜がトップだが、売り上げはレオンにかなわない。客単価がハンパないのだ。   毎週ごとの集計で、凍夜は悔しさを滲ませる。 一匹オオカミの凍夜。  帰る時、凍夜と目が合った。 ミコトは、これからレオンと一緒に『バー高任』に行く所だ。 「帰るの?」 珍しい。凍夜が声をかけてきた。  凍夜は、これからアフターの予定がいっぱいなはずだ。  「レオンのバーに行くんだ。」 「俺も後から行ってもいい?」 「う、うん、別にいいんじゃない? お客さんなら大歓迎だよ、多分。」  何故か凍夜の顔が寂しげに見えた。 気のせいだ。どうせたくさんの女の子と朝までパーティなんだろう。  いつも華やかな集団の真ん中に凍夜がいる。 それなりに太客を掴んでいる凍夜。

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