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第36話 凍てついた夜 10

 凍夜のマンションに帰って来た。相変わらず寂しい所だ。  タワーマンションがツンとして建っている。生活感がない。人間を拒絶しているように。  それでも、今日はエントランスにコンシェルジュらしき人がいた。昼間は常駐しているらしい。  いざとなったら、ここからタクシーを呼んで貰えばいいのか。 (いざとなったら、ってオレ何を考えてんだろ。)  エレベーターを乗り継いで 「一人では辿り着けないね。」  部屋は昨日と何にも変わってなかった。 「風呂に入れば? おれも寝室の風呂使うから、おまえは客間の広い方、使え。  クローゼットの中に新しい下着とか、Tシャツあるから着て。」 そう言ってまた、サッサと寝室に消えた。 (二つもバスルームがあるなんて、どんなマンションだよ。)  久しぶりにゆっくり風呂に浸かった。 ジャグジーになってるけど使い方がわからない。  怖いから、何もいじらないで普通に入った。タップリのお湯が気持ちいい。  手足を伸ばせる広いバスタブ。外が見える。 窓の外は絶景だった。  スーパーカーに乗って、こんなマンションに住んで、凍夜は何者?  大きなタオルに包まってバスルームから出てみると凍夜も出た所だった。冷えたペットボトルを手渡してくれた。 「サンペレグリノ?炭酸水でしょ。 かっこいいね。」 「キースが何箱も送りつけて来るんだよ。」 「毎日これ飲んでるの? 身体にいいのかな?」 「強アルカリの天然水だから、きっと身体に悪いな。でもキースは毎日飲んでるってさ。」  リビングのソファに座って弱炭酸、強アルカリのサンペレグリノを飲んだ。 「この家も人がいると暖かい感じがする。 いつもここは凍てついた場所だと思ってたけど。」  凍夜も向かい合った大きなカウチに座ってそんな事を言った。 「凍てついた夜。ここはいつもそうだ。 だから凍夜と名乗ってる。」

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