40 / 101

第40話 苦い麦 4

「もう俺に話したんだから、おまえの呪いは解けたな。その男と二人だけの世界は無くなったんだよ。二人だけの秘密なんてもう秘密じゃない。  ミコトが自分から殻を破って縛りを解いたんだよ。」 「あ、そうか、そうだよね。 誰かに話してしまえば良かったんだ。  自分で自分を縛ってた。今、気付いた。」 (そんな簡単な事だった。子供心の生真面目さで、一生懸命秘密にしてたのは、こんな他愛無い事だったんだ。) 「オレ、凍夜って怖い人だと思ってた。 意外と弱虫な奴?」 「あーあ、舐められたもんだ。 なんかおまえ、図々しいな。  俺の家で寛いでるの、なんか腹立つ。」 「え?ひどいなぁ。 大告白大会だったのに。もう凍夜とは友達だよ。」 「友達じゃ犯せないな。つまらん。」 「そんな気、無かったでしょ。 なんかお酒飲みたいな。ビールじゃなくて。」  今は真夜中だ。もうすぐ夜が明ける。 寒い季節じゃ無いのに、一番寒い時間。   恋人たちが抱き合って眠る時間。 「少し眠ろう。嫌じゃなかったら俺の部屋で寝ろ。」  凍夜の寝室に行った。 (いよいよ、チェリーを卒業できるか? と一瞬思ったけど、違うな。  今そんな事したら人でなし、だ。) 凍夜のベッドは広くて、乱れていた。  ここだけ、生活感がある。 「なんでこんなに大きなベッドなの? あ、彼女が来るのか。」 「ここには誰も連れて来ないよ。 おまえが初めてだ。俺とセックスしたいのか?」 「ち、違うよ。 でも触れ合いたいな、って思った。  凍夜は、気持ち悪くないから。」 「あーあ、子供か。手が出せねぇな。寝ろ!」

ともだちにシェアしよう!