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第42話 ホスト 2
凍夜がこちらに来た。凪とダンスを踊るついでのように、マリアに挨拶に来た。
「ディアボラに来るなんて珍しいね。
店同士の恋愛は御法度だっただろ。
マリア、元気だった?」
「元気じゃないわ。病気よ。
凍夜でなければ治せない病気。
恋愛は御法度だ、なんて凍夜がよく言うわね。」
凍夜は笑って
「ミコト、しっかり仕事しろよ。
美人の心を掴めよ。じゃ、失礼します。」
凪の手を取ってフロアに出て行った。
(勝ち誇ったような顔の凪。痛々しい。
傷口から血が噴き出しているよ、凪。)
そんな事を思うミコトは、もうプロのホストのようだ。
「あーあ、やっぱり凍夜は、すてきだ。
そばに来ただけで、震えてしまう。」
「マリアは凍夜に抱いて貰ったんでしょ、凄いね。」
「そう言えば、ナザレは凍夜の毒牙にかかってない貴重な存在ね。
良かった、兄弟にならなくて。」
「今夜あたり誘われるかも?あはは。」
ミコトは最近の凍夜の事を話した。
「凍夜さん、この頃アフターみんな断ってるんですよ。いつも真っ直ぐ帰ってるみたいだ。」
「そうなの?何かあった?」
「あの凄く遠い家から、車で通勤してるらしいです。時間をかけて。」
「どうしたんだろう?結婚したとか?
まさか,まさかでしょ!
結婚相手、全女性から殺されるよ。」
「ねえ、ねえ、あの席にいる人が嫁、とか?」
「あの、待ってください。
凍夜さんに結婚の話なんか全くない、ですよ。」
ミコトは、慌てた。変な噂が広まっても困る。
本当に、この頃の凍夜は真っ直ぐ帰っているようだ。来る時は同伴して客を連れて来るが、帰りは一人でさっさと帰っている。
夜遊びはしなくなった。
店が終わって珍しく凍夜が声をかけて来た。
「ミコト、相変わらずレオンの旦那のバーに行ってるのか?」
「うん、たまにね。
そろそろ自分の住む所、見つけないと、って思ってる。いよいよ一人暮らしだ。
ヤマトとタケルが、近所にしろ、って。
保護者みたいだ。」
凍夜が頭を撫でて何か言いかけた。
(相変わらず、オレはガキ扱いだ。)
「何か?」
「ん、また、今度話すよ。
じゃあな。」
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