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第44話 凍夜

 たった二日間の思い出をかき集めて、並べて毎日眺めている。 「そうだ、ダッシュボードに頭、ぶつけてた。 バカだな。いつも寝不足なのか、すぐに眠ってしまう。寝ぼけて俺を間違える。  マンションの高い所から見える景色に感動していた。風呂やベッドがデカすぎるとか、言ってたな。二人ならちょうどいいのに。」  車で「ばんや」に飯を食いに行く。 「いらっしゃい、今日も一人?」 女将さんはミコトを覚えている。今までいつも一人で来てたのに、たった一回連れて来たミコトを覚えている。  缶ビールは捨てた。ミコトが悲しむから。 抱き枕を買った。ミコトと名付けて抱きしめて眠る。 「俺ってこんなキャラだったか?」 俺は情け無い奴なんだよ。もうミコトにはバレている。  いつも二番にしかなれなかった。 バレエでも、ホストでも。一番になれないとすぐ投げ出す。  こんな弱い俺をミコトだけが知っている。 「凍夜、それはもう愛してるって事だよ。 認めちゃいなよ。」 キースが言う。  あの日、思いがけず行動していたのかもしれない。  白い車はガヤルド。ミコトを迎えに行くために乗った。  前からキースに探して貰っていた白い車、 ランボルギーニ・ガヤルドLP−560–4。  真っ白な2008年のモデルはきっと白いスーツに似合うだろう。  偶然だが、奇しくもミコトのために手に入れたようになった。 あの日、ミコトは、酔っ払ってなすがまま、だった。  花嫁を迎えに行くような気持ちになった事。ミコトは何も気付かない。 その時は同居しているヤマトと言う人に、挨拶だけは、した。  今度はきちんと嫁にもらいに行くぞ、と心の中で誓った。  ヤマトとタケルはミコトの保護者のようだから、許しを貰ってミコトを迎えたい。  ここまでキースに話したら、あきれ顔で 「凍夜ってこんな奴だったっけ?」 心の内をたった一人の親友に吐露して、凍夜の腹は決まった。

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