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第50話 ラテンの夜 2
「何食う?」
「肉!」
「キースは肉色野郎だな。
食い物も、お相手も。」
いつも行くステーキハウス。老舗だ。目の前の鉄板で何でも焼いてくれる。
「ミコトにホタテとエビ、俺は和牛のヒレ、よく焼いて。」
「あーあ、凍夜はもったいねぇな。
肉はレアで食えよ。
俺はシャトーブリアン、超レアで。」
「キースは野獣だな。
見かけの優しさに騙される。」
ミコトは凍夜に、魚介類が好きだと思われているらしい。
キースがシャトーブリアンを一切れ口に入れてくれた。トリュフ塩を少しつけただけの、生っぽい肉。
「わ、何このお肉、すごく美味しい。」
「だろ、凍夜は生肉食わないんだ。
人生の半分、損してるな。」
「野蛮なんだよ。これだから、ゲルマン民族は!
ミコトに野蛮な習慣、押し付けるなよ。」
「ほら、凍夜がヤキモチ妬いてるぞ。」
「馬鹿野郎!」
それでも、食事は和やかに進んだ。ミコトは赤ワインを飲んでご機嫌だ。
「サンバクラブに踊りに行こうぜ。」
溜池のサンバクラブに行った。ミコトは初めてだ。入った途端にラテンの世界。生バンドの演奏があるらしい。
外国人が多い。みんながハグしてくる。キースは常連のようだ。凍夜にも、声がかかる。
凍夜がミコトの手を握って、席まで離さなかった。フロアは広そうだ。バンドは休憩中?
DJがレコードをかけている。
フリードリンク、フリーフードだって。
奥のカウンターに怪しげなプライベートボトルがたくさん並んでる。全部同じデザインのボトル。
そしてビュッフェスタイルのフードが数種類。
「飲み物はそのボトル。
みんな好き勝手に作って飲む。
ハイボールにするか?」
キースが耳元で
「怪しい酒だ。悪酔いするから、ソフトドリンク、瓶のコーラとかにしな。
俺は小瓶のビールにするよ。」
自分で栓を開ける。これは安心だ。
「ワインも不味そうだな。」
休憩が終わった生バンドがラテンミュージックの演奏を始めた。
小瓶のビールをラッパ飲みしていたキースと凍夜がシャツを脱いだ。
「今日は、ラテンを踊る格好してないからな。」
シャツの下はピッタリしたタンクトップで細身ながら筋肉の胸が厚くてカッコいい。ミコトは目が離せない。
じっと見てしまった。凍夜が気付いて、軽くキスしてくれた。
二人が立ち上がってフロアに出て行った。
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