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第56話 一人で眠れない

 今頃、凍夜は、凪を抱いているのだろうか。 ホストなんだから当たり前だ、と思っても割り切れない。凍夜の過去を気にしたらキリがないって、ミコトだってわかっている。  でも過去のことでは無い。現在進行形の情事は耐え難い。 「わかってる。そんな男を愛したんだ。 でも、一人にしないで。」    スマホが煩い。何回も呼び出している。 「ミコト、どこにいる? 本当の事を話してやっと解放されたんだ。 ごめんよ、一人にして。」 「うん、ヤマトのマンション。」 「すぐ、迎えに行く。」  凍夜は蒼ざめた顔で帰って来た。 「凪に全部、話したんだ。 ミコトを愛している事。彼女は信じない、って言ってた。思い詰めて何かしなければいいけど。」 「凪さんはそんな弱い人じゃないよ。 きっと作品に生かす何かを掴むよ。」  明け方、家に帰った。今ではここが凍夜とミコトの家。  凍夜に抱かれて、幸せを噛み締める。今なら最後まで出来そうな気がする。くちづけから身体を 弄るその手が、感じさせてくれる。 「ミコトを傷つけたくない。ゆっくり時間をかけて、するよ。」 「あ、恥ずかしい。そんな所にキスしないで。」 「可愛い。ミコトの全部が好きだよ。」 「凪さんと、したのかと思ってた。」 「バカだなぁ。ミコトと結婚したんだよ。 他の誰も抱いたりしない。早く帰りたかった。 もう、ホストは潮時かな。」    大事な話は後回しだ。今は未知の世界に夢中なミコトだった。  慣れた手つきで身体を弄る。時々熱いくちづけ。その唇がミコトの胸を這う。 「あ、あ、はあ。そこはダメだよ。」 乳首を可愛がられて吐息が漏れる。凍夜の唇が下に降りてミコトのペニスを見つける。  「や、凍夜のも欲しい。」  お互いのいきりたったものを口で愛撫する。 凍夜がローションを出して指にまとわせる。 「痛かったらちゃんと言えよ。指入れるよ。」  一本、入った。凄い締め付けだ。指を入れながら抱きしめて、耳元で囁く。凍夜の声に導かれて、初めての扉をこじ開けられた。

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