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第58話 新入りホスト
凍夜はミコトが愛しくてならない。この執着は生まれて初めての感覚だ。寝ても冷めてもミコトを探してしまう。
「ミコト、ミコト。俺のそばを離れるなよ。」
「え?何言ってるの?いろいろやる事があるよ。」
「いいんだ、何もいらない。
ずっとこうしてベッドの中で抱き合っていたい。」
それでも時は過ぎて行く。
「俺はもう、ホストを続けたくない。
何か違う仕事を探すよ。ミコトにもホストは辞めてもらいたいけど・・。」
「うん、凍夜が急に辞めたらお店もお客さんも困るよね。オレはまだ新入りだから、辞めたっていいけど。」
今夜は同伴は無し、で2人で出勤した。
凍夜とミコトの結婚は、店の誰も知らない。
円城寺には
「あの、後で話があるんだけど。
出来ればオーナーにも聞いてもらいたいです。
菫さん、今夜は予定空いてるかな?」
「オーナーに用があるのなら、連絡しておくよ。」
二人は出来れば今夜で辞めたい、と考えていた。
今日はレオンは出勤日だが、多分忙しいだろう。改めて『バー高任』には、挨拶に行こう、と話していた。
ディアボラは今夜もモータウンナイトが続いている。新入りのショーンが来た。
「凍夜、本当にホストになっちゃったよ。」
「ショーンはホスト、向いてるかもな。
ダンスもうまいし、女好きだし。」
「女好きってなんだよ。
ボクはバイ、だからね。」
ショーンは、凍夜とキースのバレエの後輩だった。
「ボクは小さい頃から、クラシックバレエやってたんだ。凍夜とキースの影響で、コンテンポラリーダンスに興味持って、道を外れた。」
「まるで、悪の道に引き摺り込んだような、言われようだな。
おまえは、続ければよかったんだよ。」
昭和のディスコのような選曲で、ソウルナイトが始まった。
「わあ!懐かしいわね、ゲットレディ!
みんな横並びで踊ったっけ。」
菫ちゃんの友達は、みんな昭和のお嬢さんたちだ。
「ジュリアナで踊ってた感じ? 」
『マダム関口』の麗華社長が聞いた。
「私はもっと前。椿ハウスの頃よ。
イヤァね。年がバレるわね。」
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