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第60話 修羅場

 凪が入って来た。もちろん凍夜をご指名だ。ミコトの事を知っても、諦めていないらしい。  凍夜から事情を聞いているショーンがヘルプに入った。ミコトもレオンも気にして離れた所から、目を離さないようにしている。レオンもミコトからザックリと説明されたのでおおよその事情は知っている。 「いらっしゃい、凪。 昨日の今日で、よく来てくれたね。」 「あなたを殺しに来たの。」 ゾッとするような眼で凍夜を見た。 「冗談。 凪ほどの女性が何を言ってるのか。」 バッグから果物ナイフを取り出す手を、気づいたショーンが掴んだ。ニッコリ笑って 「初めまして。ボクと恋をしましょう。」 凪にハグしたショーンの身体から、ジワリ、血が滲んできた。 「わっ、刺さってる。」 ショーンが凪を抱いて腹を刺された。  救急車を呼ぶ声を、虚な瞳で見ている凪。 「どうして?そんなに嫌なの? オレと凍夜が一緒になるのが。」 ミコトは自分が悪いのだ、と思ってしまった。  幸い、ショーンの傷は浅く、大した事は無さそうだ。  凍夜は、人が刺された、という現実に頭がついて行けない。  円城寺は警察沙汰にしたくなかったが、そうもいかず警察官が来て凪を連れて行った。凪は抜け殻のようだった。 「凍夜、話があるって事だったが、また別の日にしてくれ。」 円城寺はそう言って事情聴取を受けに警官の所へ行く。 「キースを呼んだ。ショーンの所へ行こう。」 凍夜に連れられて病院に行った。大した事は無い、と言ってもショーンは手術室にいた。    廊下で待っていると、ショーンのママが来た。 「おお、ホストクラブって、こんなに野蛮な所なの? トウヤが付いてるから、心配してなかったのに。」 「すみません。俺も油断した。 こんな事になるなんて、申し訳ない。」 「あなたを小さな頃から知ってるわ。 頑張り屋さんで、いつも泣きながらバーレッスンしてた。よく知ってるから安心してたのに。」 「ママン、凍夜を責めないで。 凍夜は無理に誘った訳ではないよ。 ショーンの好奇心からホストクラブに勤めたんだ。今はショーンの無事を祈ろう。」

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