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第74話 俺の男

 凪の小説、『凍てついた夜』では主人公が男色に目覚めて、以前から気になっていたホストクラブの新人と結ばれる。  しかし彼は、手をつけた女に、刺されそうになり、それを止めようとした、この新人が命を落とす、というストーリーだ。その後、悲しいブルースを歌う歌手として大成する、と言う話だった。  「不吉だ。」 凍夜は腹を立てた。 「ミコトはこんな小説、読まなくていいよ。」  ご丁寧に、出版社から著者のサイン入りの贈呈本が送られて来た。 「本の中でミコトを殺しやがった!」  ミコトの肩を抱き寄せて、不安な気持ちに目をつぶる。それでも心は鎮まらない。 「ミコトを殺しやがった。 寄りにもよって、ミコトを殺した!」

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