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第76話 ショーン

 凪は、本が話題になっても、あらゆる取材を断って隠遁生活を徹底している。  ショーンだけが訪ねてくる。 相変わらず、ショーンは凪に手を出さない。有名な話題の料理などを買って来てくれる。  それを二人で食べるのが嬉しいという。 「僕、そろそろ凪にプロポーズしたいんだけど。」 「冗談キツイわ。ダメに決まってるでしょ。 大体、あなた何才なの?」 「僕は26才。凪は?」 「私、もう32才よ。凍夜よりも年上だった。」 「全然かまわない。6才の差なんて大した事じゃない。結婚しよう。」 「じゃあ、執行猶予が明けたらね。 あと、4年半、待てるの?」  誰も知らないハッピーエンド。 誰にも言わずに二人は結婚した。4年半も待てなかった。愛し合って子供が出来たのだ。  赤ん坊は金髪碧眼。誰が父親か、なんて聞くものはいなかった。ショーンに生き写し、ミニチュアのショーンだったから。 「私、凍夜を忘れられない、と思ってた。 でも違った。赤ちゃんが生まれるなんて。  私の人生に、赤ちゃんが登場するなんて。 赤ちゃんに夢中よ。  赤ちゃんをくれたショーンにも夢中。 ありがとう。」  意外だった。凪は結婚にも出産にもシニカルな考えを持っていると思っていた。 (確かに私は自分が親になる事に懐疑的だったわ。家族、なんてゾッとすると思ってた。)  それでも赤ん坊は別格だ。溺愛する。 赤ん坊を授けてくれたショーンを誰よりも愛するようになった。劇的な心境の変化。 「凍夜とだってこんな未来は思い描けなかった。 ショーン愛してる。」 凪は人が変わったようだった。  ショーンのママは困った顔をした。 「凪さんは前科者。ショーンの嫁にしたくないわ。刺した人を愛するなんて。  彼女はどんな手を使ったのかしら?」 「ママン、止めて。 僕を愛しているなら、 ママンの息子を愛しているなら 祝福して欲しい。  ベビーと凪を愛して欲しい。」

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