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第80話 凍夜の事 2
「たいして面白くないよ、俺の家族は。
キースの家族は楽しそうだったけど。
でも、おふくろさんは、キースが中学生の頃、亡くなったんだ。
長い闘病生活だったから、キースは悲しみながらもホッとしていた。そして、東京に引っ越してしまった。」
離れても二人はバレエを続けていた。
お互いに、期待の若手なんて言われていた。続けていれば、噂は聞こえてくる。
しかし、その頃にはもう、クラシックバレエではなくコンテンポラリーダンスに傾倒していた。
東京で再会したキースも同じだったから
「アメリカを見て来よう。
本場のダンス。」
高校の夏休みを利用してブロードウェイを見に行った。そして打ちのめされた。
「ダメだ。みんな凄い! レベルが違う。
俺、出来る気がしない。身体能力が違う。」
「凍夜は続けろよ。
僕はファティの仕事、手伝う事になったから、
車の勉強しなくちゃいけない。
もうすぐ運転免許も取れる年だし、見込みのないダンスはやめるよ。」
お互いに打ちひしがれて日本に帰って来た。
母親はバレエ留学を勧めてきたが、凍夜は母の束縛から逃れたかった。
「それ以来、親とは付かず離れず。
気が乗らない大学は3日で辞めた。」
凍夜の母親に会いに行く事になった。
「俺は好き勝手に生きてきたけど、ミコトの事だけは、ケジメをつけたい。
ミコトは俺にとってどうでもいい人間じゃないんだから。
おふくろに会ってくれるか?」
「おかあさんはきっと、オレに厳しい目を向けるね。怖いけどご挨拶だけはしておきたい。」
ミコトは不安だ。凍夜が優しく抱きしめてくれた。
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